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2015/10/22(木曜) 18:08

モハッラム月のイランの人々の宗教的な儀式

モハッラム月のイランの人々の宗教的な儀式

今回は、シーア派3代目イマーム・ホサインを追悼する、イスラム暦のモハッラム月の文化や芸術についてお伝えし、このシーズンに行われる、イランの人々による宗教的な儀式についてお話することにいたしましょう。

 

追悼行事、或いは祝祭という形で行われる宗教的な儀式は、多くの国の国民や文化の文化の中に深いルーツを有しています。1年のうちの特定の日や時期には、小さな村や遠隔地に足を運んでも、どのようにして大規模で特別な儀式が行われているかが見られます。

イランや一部のイスラム諸国で、モハッラム月に行われる追悼儀式は、西暦680年に現在のイラクのカルバラーで、シーア派3代目イマーム・ホサインが殉教したアーシュラーの出来事に因みます。この儀式は、イスラム教徒の過去の伝統や口承文化から起こったもので、特にイランをはじめとするイスラム教徒の間で、非常に盛んに行われています。このため、イスラム圏ではこの出来事に対する人々の思い入れが強く、伝統儀式が深く根付いていることが伺えます。

 

アーシュラーの追悼行事は、イランでは非常に多様性に富んでおり、イラン全土で一般的に行われるものもあれば、ある特定の地域で行われる形式のものもあります。しかし、それらの全てに共通しているのは、イラン的な要素とイスラム的な要素が融合していることです。驚くべきことに、この儀式を間近で見学すると、2つの豊かな文化が奥深いルーツを持つ伝統において具現され、毎年アーシュラーの日に行われています。

 

イランの伝統追悼劇タアズィーエ

特定な形を持つ、最も古いイランの伝統劇は、タアズィーエと呼ばれる追悼劇です。これは、アーシュラーの出来事を再現したもので、多くの観客が集まります。テヘラン大学で教鞭をとる哲学者アナーソリー氏は、タアズィーエの重要性を強調しており、次のように述べています。

「タアズィーエは、配役や衣装、象徴主義、配色、舞台設定、せりふや演技の美しさ、感情の表現、伝統劇に見られる繊細さなどの点で、特別な演劇である。タアズィーエは、人間の悲しみや哀悼の気持ち、苦痛や災いを具現すると共に、光と闇、そして栄誉と嫌悪という2つの要素の対立を表している」

アーシュラーに関するそのほかの追悼劇

世界の多くの人々の間では、アーシュラーの追悼儀式はタアズィーエとして知られていますが、この他の様々な儀式も、アーシュラーの出来事の影響を受けており、数百年もの間行われてきました。これらの儀式の多くの構造は、互いに類似していますが、一部の事例においては気候的、地理的条件により多少の相違があります。これらの儀式の多くのテーマにおける英雄伝の繰り返しや、情熱、そして感情は美しい形で解釈され、最も偉大な宗教的、倫理的な教えを含んでいます。これらの儀式が行われることで、人々は自分の心によって愛というものを解釈し、自己献身や勇敢さ、信仰心、正義の追求、圧制の排斥を解釈することになります。

 

称賛行為としてのマナーゲブハーニー

これらの儀式の1つであるマナーゲブハーニーは、宗教的な称賛行為です。これは、英雄伝、儀礼、宗教、芸術的な物語を語り、含みのある形で行われます。過去においては、この語り部はモスク、或いはテキエと呼ばれる施設での集まりの場において、語りを行っていました。歴史によれば、それは宗教の布教活動であり、語り、称賛することで、イマーム・ホサインとその一門に対する思いを表現していました。

祈祷の朗読・モナージャートハーニー

モハッラム月に行われるもう1つの儀式として、モナージャートハーニーと呼ばれる祈祷の朗誦があります。追悼行事の際に朗誦される宗教的な詩や歌唱、祈祷は、先に紹介したマナーゲブハーニーとして知られる儀式や宗教的な称賛行為の1種とされています。ここでいう祈祷の朗誦は、イランの英雄や勇者の儀式として形成され、多くの場面において清らかな預言者の一門に訴えかける為の手段とされています。カルバラーで殉教したイマーム・ホサインに対する思いは常に、この祈祷の語り部に、英知や清らかさ、自己献身、勇敢さの源を思い起こさせます。

この祈祷の朗誦は、そのほかの全ての宗教的な儀式と同様に、イマーム・ホサインの人格の影響を受けています。この祈祷を朗誦する人物は、殉教者の称賛や祈祷により、最も確実な源に訴えかける方法を人々に教示します。この祈祷の儀式は、イランで多くの追悼行事とともに行われます。

 

木製のみこしを使用するナフルギャルダーニー

モハッラム月に行われる特別な儀式には、ほかにもナフルギャルダーニーと呼ばれるものがあり、これはイランの多くの地域で実施されますが、地域ごとに多少の違いが見られます。ナフルとは、木材で作られたみこしのようなもので、布地や鏡、灯り、草花などで装飾されています。この木製のみこしは、アーシュラーの当日に、タアズィーエや挽歌の朗誦の場に運ばれます。このみこしは、木の葉やイトスギの形に造られており、大変重く、これを動かすには数十人もの助けが必要になります。

このナフルは、古くからの伝統にルーツを有しており、カルバラーでの殉教者の棺のシンボルとされています。また、イトスギの木の形状に大変よく似ていますが、イトスギは一般の人々の文化においては、未来永劫や勇敢さ、来世の生活と自由を表し、これらはイマーム・ホサインの精神性や特徴を想起させます。

この木製のみこしを持ち上げる際には、数十人の男性がこのみこしを下から持ち上げて動かし、大勢の人々の間を通り抜けていきます。彼らは、このみこしを運びながら特定の道を通過し、ホセイニーエと呼ばれる宗教施設の周りを回ります。イラン中部の都市ヤズドでは、この行事が極めて重要であることから、今なおこの木製のみこし作りで栄誉を得ている家族が存在しています。

 

殉教のシーンを朗誦するマグダルハーニー

アーシュラーの痛ましい出来事、そしてこの出来事が精神性あふれる宗教的な詩によって歌われていることから、殉教のシーンを朗誦するマグタルハーニーという儀式が生まれました。これは、イランの様々な地域に存在しており、例えば南西部のフーゼスターン州の人々は、この儀式を実施する中で、この地域の特有の宗教的な楽器を演奏します。

マグダルとは、アラビア語で「刑場」を意味します。マグタルハーニーの儀式は、非常に幅広く、歴史記述の形式とも見なされます。実際に、歴史のある時期においては、カルバラーの出来事について記している書物はいずれも、このマグタルというタイトルがついています。カルバラーの出来事を最初に伝えたのは、敵の捕虜となった預言者一門の一部と、イマーム・ホサインの遺族であり、彼らはシーア派の歴史上で初めて、マグタルハーニーを行いました。このように、この出来事について見聞きした事柄を記録することに成功した最初の人々こそ、殉教の光景を最初に記録した者となったのです。

ウマイヤ朝の圧制者は、そうした恐ろしい犯罪を行った後、その痕跡を消すことに全力を尽くしました。即ち、彼らはアーシュラーの出来事の報告者を、過去の圧政者を称賛し、彼らの圧政を承認するよう仕向けたのです。彼らは、こうした方法により、アーシュラーの出来事以降の人々による抵抗運動を阻止し、暴虐との戦いの道を塞ごうとしました。しかし、事実が圧制とうその中に隠れることはなく、ウマイヤ朝のやり方は失敗に終わりました。

マグタルハーニーは、人々の儀式として口承と記述の2つの形式をとり、人々の信仰と分かちがたい形で定着し、歴史の記録と同様のものになりました。特に、シーア派は常に、歴史的、宗教的な資料、さらには貴重な作品として殉教の記録を参照し、それらを現在まで風化させることなく守ってきたのです。

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