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2016/01/14(木曜) 23:34

ユネスコ創造都市ネットワーク(2)―多様な食文化を誇るイラン北部ラシュト

ユネスコ創造都市ネットワーク(2)―多様な食文化を誇るイラン北部ラシュト

最近、ユネスコはイラン中部の都市イスファハーンと、北部の都市ラシュトを初めとする世界の47の都市を、ユネスコ創造都市に認定したことを明らかにしました。


これらの都市は、クラフト及びフォークアート、デザイン、映画、食文化、文学、メディアアート、音楽の分野における可能性に基づいて、世界33カ国から選ばれています。これらの都市のうち、イスファハーンは伝統工芸が盛んであること、そしてラシュトは多様な食文化を有するという理由で選出されました。
ユネスコ創造都市ネットワークは、2004年に創設され、現在は世界の116の都市がこれに加盟しています。このネットワークの目的は、加盟都市がクリエイティブ分野への投資を目的とした国際協力を強化することです。ユネスコの見解では、創造力は都市の向上的な発展や社会的な協力、文化的な新しさを誘導するものとされています。今回、イランからは北部のカスピ海沿岸の都市ラシュトが、食文化の多様性を評価され、このネットワークに加盟しました。このことは、この町のブランド化という最も重要な目的の1つに向かう決定的な歩みとされる点で、きわめて重要なものです。
イラン北部ギーラーン州の中心都市ラシュトは、テヘランの北西およそ300キロに位置し、標高は平均で5メートルです。この町の南部には、アルボルズ山脈があり、北はカスピ海とアンザリー潟に面しています。この町は当初、森林地帯の中にある大きな村落であり、イランの古い都市の1つと見なされています。因みに、ラシュトという地名は、10世紀ごろに記された書物にも見られます。

ラシュトには、多様な民族や方言が存在します。この町の属するギーラーン州は、イランで最も小さい州の1つですが、イランの他のどの州よりも文化的な多様性が見られます。この州の各地に様々な民族が平和的に共存するようになってから、数百年が経過しています。こうした共存により、共通の文化が生まれると同時に、これらの民族はそれぞれの民族性や個別の方言を維持してきました。こうした豊かな文化は、ギーラーン州の人々の伝統や慣習にも現れています。こうした古くからの慣習は、長年が経過した今なお、ギーラーン州の人々、そしてラシュトのような近代的な都市に住む人々にも見られます。
ギーラーン州の豊かな文化を示すものの1つは、その多様な食文化です。この州では、170種類以上の料理が存在し、冬場だけでもおよそ60種類もの郷土料理が作られています。ギーラーン州およびラシュトの有名な郷土料理には、焼きナスをつぶしてトマトや卵などと混ぜたミールザー・ガーセミー、肉をざくろのペーストとクルミの粉末で煮込んだフェセンジャーンなどがあります。この州の郷土料理がこれほどバラエティに富んでいるのは、野菜が豊富にとれ、気候が多様であることによります。ギーラーン州の温暖な気候は、各種の果物や豆類などの栽培に適しています。
料理は、あらゆる社会においてその社会の人々の文化、気候、生活体系におけるアイデンティティに則しているといえます。人間とそのほかの動物の大きな違いの1つとして、調理をすることが挙げられています。フランスの社会人類学者レヴィ・ストロースは、著作『生のものと火を通したもの』において、調理という行為を、自然から文化に移行するプロセスを示すものであるとし、人間の条件がその全ての属性を含め定義されているとしています。
過去においては、良好な農業経済に恵まれ、農産・畜産加工品といった豊かな食材を調達できていた社会では、料理の文化や調理の技術の多様性、食材の生産と分配が発達し、普及していました。また、農耕に適した経済や気候状態にない社会では、食文化の水準が低く、食材の種類も少なかったのです。イランは、驚くほど食の多様性に恵まれています。
生の食材を食べられるようにする方法、そしてイランの様々な調理法は、500年ほど前のサファヴィー朝時代から残る2つの書物に収められており、これらはイランが先進的で複雑な調理技術で長きにわたる歴史有していることを示すものです。イランの作家で翻訳家のナジャフ・ダルヤーバンディー氏は、イランの多様な料理と食材に関する著作において、次のように述べています。
「イラン料理には、その本質を特徴ある有名なものにした、イラン文化から生まれた秘密が隠されている。イラン料理は、絨毯や建築、神秘主義思想、イラン文学のように、非常に進んだ芸術であるとともに、絨毯のように、イランの女性たちによる理屈抜きの成果であるといえるものであり、この芸術は生命を生み出す泉のように、イラン国外でも料理という芸術の幅広い領域をカバーしているといえる。イラン料理はまた、イスラム諸国の国民やインド亜大陸の人々の間で、料理の主流となり、スペインやイタリアの文化を経由して、南ヨーロッパの料理文化にも入り込んでいった」

イランの人々は、紀元前のアケメネス朝時代から米の存在を知っており、豊かな水資源と温暖な気候に恵まれた地域では米作を行っていました。イランの伝説における歴史には、次のように述べられています。
「食物の調理は、ザッハーク王の時代から始まった。イランの食材の名称や調理法の表現の多くは、アラビア語をはじめとする外国語の書物に見られる」
全ての料理は、使い方や調理法、材料、そしてその食材が普及している、あるいは知られている地域によって分類されます。最も重要なイラン料理には、豆と骨付き肉の煮込み料理アーブグーシュト、肉と野菜、インゲン豆の煮込み料理ゴルメサブズィ、そしてキャバーブと呼ばれる各種のイラン式の焼肉などがあります。イラン料理は大きくいくつかに分類することができ、それらはスープ風のアーシュ、ペースト状のハリーム、豆と肉の煮込み料理アーブグーシュト、クークーと呼ばれる各種のオムレツ、肉団子風のクーフテ、ピーマンやナスなどにひき肉を詰めたドルメ、各種の混ぜご飯、肉と野菜、豆を煮込んだおかず・ホレシュトなどです。
ギーラーン州は、イランで最も重要な稲作地帯であり、重要な食材の1つは、容易に調達できます。さらに、カスピ海に面しており漁業が盛んであることから、この地域の人々の食材は多様性に富んでおり、また魚料理がたくさん出てきます。
海から取れる食材は、豊富なタンパク質を含みコレステロールが低く、さらに各種のビタミンや塩分も含んでいます。魚肉には、ビタミンA、B、D、カルシウム、リンのほか、少量の鉄分、銅、セレンも含まれています。栄養学の専門家は、特に心臓疾患を持つ人をはじめとする全ての人々に対し、週に2回、1回につき90グラムの魚を食べるよう奨励しています。ギーラーン州の人々の平均寿命が長い理由の1つは、魚を食べていることにあります。因みに、2013年のギーラーン州の人々の平均寿命は75歳で、これはイラン全体の平均寿命より3年ほど長くなっています。

19世紀のポーランドのイラン学者、アレクサンダー・コズコは、『ギーラーン州の地』という書物において次のように述べています。
「イラン全土において、至る所に野鳥が生息しているのはギーラーン州だけである。この州の調理技術は、テヘランの宮廷でも名声を博している」 さらに、20世紀初頭のある作家は、ギーラーン州の郷土料理について次のように述べています。「ギーラーン州の主要な料理は、米と塩漬けの魚の切り身である、この州の人口の多い地域では、ナンはあまり食されない」
さらに、ギーラーン州、特にラシュトの料理が多様性に富んでいるもう1つの理由として、年間を通して様々な時期に多様な種類の野菜や果物がたくさん収穫されることが挙げられます。中でも、最も重要なのは野菜を使ったメニューの多様さです。ギーラーン州は郷土料理のメニューがバラエティーに富んでいるという点で、イランで随一といえます。ギーラーン州の郷土料理は、この緑豊かで美しい州の観光面での強みであり、ギーラーン州を訪れた人々は決して、この地の郷土料理の味を忘れることが出来ないと思われます。

 

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