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2015/07/05(日曜) 18:31

ラマザーン月と共に(11)

ラマザーン月と共に(11)

宗教的な命令である断食は、精神面で大きな恩恵があるのみならず、人間に対する大きな教育的効果があり、さらには青少年の教育に大きな役割を果たしています。なぜなら、この宗教的な行為は、青少年に対し自らの精神的な興奮をどのように抑えるべきかを教える上で最高の手段だからです。これについて、イランの心理学者で大学教授のバースターニー博士は、次のように述べています。「一般的に、断食は人間に自らのニーズを満たさずに我慢することを教えるものであり、精神が高ぶり何かを強く必要としているときに自らの感情を制御し、行動に慎重さと落ち着きをもたせることを狙いとしている」


社会的な側面における断食の効能の1つは、それが社会的な規範や他人の存在に敬意を払う訓練になるということです。一方で、他人の言動に辛抱強く対処することは、建設的な社会関係の基盤となるものです。断食は、人間の忍耐力の強化の下地を整えるものなのです。
断食が宗教的な義務として注目されている社会では、全ての人々が自分を制御し、社会の規範を守り、断食をしている人々の迷惑になるような全ての行動を差し控えることが義務付けられています。また、そうした社会では全ての人々が神の掟や、ラマザーン月のものとして神が定めた威信を尊重し、モラルや宗教的な規範に反する言動を厳に慎むのです。病気や怪我で療養中の人や何らかの理由で断食が出来ない人は、できる範囲で自分の言動を制御し、ラマザーン月に敬意を払うべきだと考えています。
ラマザーン月には、断食をする人は単に飲食を控えるのみならず、自分の体の各部位にも断食を課すことになります。ここで言う、体の各部位の断食とは、特に目や耳、そして口舌をコントロールし、見聞きする事柄や口から発するものに注意を払うことであり、このことは社会を健全なものにする上で大きな役割を果たしています。ですから、断食とは1つの制御装置のようなものであり、いわば人間の内面を取り締まる警察官として人々を監視し、それにより社会の安全が守られることになります。
宗教的な義務、特に礼拝、断食は社会的なルールへの違反を初めとする犯罪を減らす上で、基本的かつ重要な役割を果たしています。その代表的な実例として、ラマザーン月には普段の月に比べて犯罪の発生件数が減少することが挙げられます。複数の統計からは、この月には窃盗、殺人などの凶悪犯罪、暴力や傷害事件、性的暴行といった犯罪が大幅に減少することが分かっています。このため、ラマザーン月の到来により,社会は厳粛で精神的な雰囲気に変わり、一般の人々がその影響下に置かれます。こうした環境においては、犯罪に走ろうとする意欲が減退します。ですから、ラマザーン月と断食は、社会的なルールへの違反や犯罪を減らす上での重要な教育的手段だといえるのです。断食により、人間の心の内面に変化が生じ、社会的に好ましくない言動が減少し、社会の治安が強化されるのです。
ラマザーン月における重要事項とされ、イスラムで好ましいとされている事柄の1つは、食事の席を設けで断食をした人々にイフターリーと呼ばれる、1日の断食の終了後の夕食を出すことです。基本的に、イスラムでは客をもてなすことが奨励されており、この行為に関しては価値ある大きな報酬が約束されています。イスラムの預言者ムハンマドは、家の中に客が入ってくることを神からの贈り物と見なし、次のように述べています。「神が、社会や人々の集団によい物を望むとき、彼らに贈り物を下される」 これに対し、ある人が、そのような贈り物とは何かと尋ねました。すると、預言者ムハンマドは次のように答えました。「それは、日々の糧を携えてやってくる客であり、立ち去るときには、訪問先の家族から罪を一緒に持ち去ってくれるのである」
シーア派2代目イマーム・ハサンは、常に貧しい人や恵まれない人々を助けることに努め、一生を通して2回は自分の全財産を、3回は自分の財産の半分を貧しい人々に施しました。伝承によれば、イマーム・ハサンは貧しい人々を決して追い返すことがなかったということです。
歴史上の記録には、次のように述べられています。ある時、シーア派2代目イマーム・ハサンと3代目イマーム・ホサイン、そしてその父方の伯父の息子に当たるアブドッラー・イブン・ジャアファルが、メッカに向かって旅をしていました。既に出発し、メッカへの道を進んでいた彼らの一行は、道の途中で空腹と喉の渇きに襲われます。すると突然、彼らの行く手にテントがあるのが見え、そこには年老いた女性が1人で暮らしていました。イマーム・ハサンらの一行はそのテントに行って、水と食べ物をくださいと頼みました。すると、寛大なその老女は自分の全財産である1ぴきの羊を連れてきて、次のように述べました。「皆さん、この羊の乳を搾って飲んでください。神に誓って、私が薪を拾いに行って戻ってくるまでに、この羊を殺しておいてください。その肉を食べましょう」 そこで、彼らはその羊を殺し、食事を作って食べました。それから、その老女にお礼を述べ、次のように語りました。「私達は、メッカ巡礼に向かっているクライシュ族の者です。メディナにお越しの際は、是非私どものところへお立ち寄りください。今回のお返しをしますから」 それから、彼らはこの老女に別れを告げ、そこを立ち去りました。
それから、時が流れ、干ばつが襲ってきました。ベドウィンの遊牧民は、大都市に移住しました。あの老女も、夫とともにメディナにやってきましたが、誰も伝がなかったので、ラクダのふんを集めて売っていました。ある時、イマーム・ハサンが、自宅の側にたたずんでいたとき、1人の老女がそこを通りかかりました。彼は、その老女に気づき、声をかけました。「あのう、すみません。私をご存知でしょうか」 しかし、その老女は「いいえ」と答えました。イマーム・ハサンはこう告げました。「私は、ハサン・イブン・アリーと申します。何年も前にあなたのテントにお邪魔して、あなたからご馳走になったあの客の1人でございます」すると、その女性はたいそう喜び、次のように述べました。「これは、何としたことでしょうか。知らぬこととは言え、失礼いたしました。あなた様はあのときのイマーム・ハサン様でいらっしゃったのですね」 イマーム・ハサンは、その老女にその当時のもてなしにお礼をするため、召使に命じてその老女に1000頭の羊を買い入れ、1000ディナールの金銭を渡し、さらに彼女をメディナにいる自分の兄弟のイマーム・ホサインのもとに連れて行きました。イマーム・ホサインも、兄と同じようにこの老女にお礼をし、ゼイナブの夫アブドッラー・イブン・ジャアファルの元にこの老女を連れて行きました。アブドッラーも、イマームたちと同じ額の金銭をこの老女に与えました。
断食をする人々の多くは、数日間断食をした後に、次のような真実を認めています。それは、真夏の断食は非常に困難だと考えられているものの、自分たちには自分の心と体に対するこの宗教的な行為の目覚しい効果が感じられるということです。イエメン出身の若い女性アイマさん(20)も、断食によるこの恩恵を受けている1人です。彼女は、アメリカ・イリノイ州シカゴに在住する若手のイスラム教徒であり、次のように語っています。
「日の出前から日没まで断食をするという行為を30日間続けることは、食事療法にとっての規則正しい、そして新たなプログラムであるように思われます。この規則正しいプログラムには、勿論人間の健康に多大な効果があり、現在多くの学者も断食の効能を認めているのですが、断食の本来の目的は、それをはるかに超えたものです。断食というこの習慣は、聖なる1ヶ月間を通して、心の内面を浄化する方法なのです。しかも、断食をすることで生活も規則正しくなります。特定の時間が来たら飲食をやめ、特定の時間に飲食を解禁することは、生活の規則正しさの重要性を思い起こさせるものです。私が初めて断食をしたとき、イスラム教徒でない私の友人たちは、レストランに食事に行こうと私を誘いました。私はその当時、まだ今よりも年少でしたが、誘惑と戦いました。後になって、私はこの誘惑への抵抗を、実生活におけるそのほかの事柄にも応用できることに気づいたのです。そして、このことが、私にとって断食の第1の効果だったといえます」 アイマさんはまた、断食に注目する重要な理由の1つとして、断食が家族の心を合わせ、連携することに大きな効果があるとしており、次のように述べています。「日没後の食事イフターリーと、断食前の食事であるサハリーを摂るため、皆と食卓を囲んで座るとき、家族の間に独特の親密さと愛情が芽生えます。このことにより、私たちは互いをより素晴らしい存在として認識するのです」

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