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2015/02/07(土曜) 19:55

ライオンと牛(1)

ライオンと牛(1)

これまでの番組では、ペルシャ語の民俗文学におけるジャンルの一つ、動物が出てくる物語についてお話してきました。こうした物語の重要な特徴は、先を見通し策略を練ること、敵を信頼すると損害を蒙ること、などがテーマになっています。動物が出てくる物語のテーマは多岐に渡っており、全てを紹介しきれないほどです。最後にご紹介するテーマは、密告し、騒ぎを起こすことです。今回はまず、最初に物語をご紹介し、後ほど、物語の内容について説明することにいたしましょう。

 

昔々のこと。あるところに2頭の牛を飼っている商人がいました。この商人は取り引きのために旅に出ました。道の途中で、2頭の牛が泥沼にはまってしまいました。1頭は死んでしまい、もう1頭も大きな怪我を負いました。商人はけがをした牛をその場に放置し、去っていきました。牛は何とか自力で泥沼から這い上がり、近くにあった緑豊かな草原へとたどりつきました。怪我をした牛は、数日後にはすっかり回復し、丸々太った立派な姿になり、上機嫌で歌を歌っていました。

その草原は、動物たちの王であるライオンの領土でした。そのときまで牛の声を聞いたことのなかったライオンは、その声に恐れおののきましたが、何も言いませんでした。ライオンの宮殿には、2匹のジャッカルが暮らしていました。一匹はケリレ、もう一匹はデムネという名前でした。デムネは欲が深く、いつもライオンに近づき、彼の側近になりたいと願っていました。デムネはライオンが、牛の声を恐れていることに気がつきました。そこで、その声がどこから来るのかを確かめに行き、牛の姿を発見しました。そして、ある計略のために牛と仲良くなりました。

それからデムネはライオンの許に行き、ライオンの恐怖心を利用して、彼に近づくことにしました。デムネは、ライオンが何を恐れているのか理由を尋ねてみました。デムネは、ライオンから恐怖の理由を打ち明けられると、彼に向かって言いました。「あの声は牛のものです。彼は最近、この草原にやって来ました」 それからデムネは、牛を伴ってライオンのもとにやって来ました。ライオンは牛が気に入り、彼を自分の側近にし、こうして少しずつ、全ての問題を牛に相談するようになりました。

嫉妬深いデムネは、この関係に心から不愉快になり、牛に自分の立場を取られたと感じていました。そのため、牛を殺してしまおうと思いました。こうして、牛が不利になるようなことをライオンに密告し、ライオンを唆しました。デムネは、牛が言ってもいないこと、してもいないことをライオンに話し、また一方で、同じことを牛に対してもしていました。こうして、ライオンは牛に対して憎しみを抱くようになり、性急な決断を下して牛を殺してしまいました。

これら全てのことが起こっている間、デムネの親友のケリレは、ずっとデムネに反対していました。しかし、デムネは彼の言うことに耳を貸しません。ライオンは牛を殺してしまったことを後悔し、悲しんでいました。そこでデムネは、ライオンのことを慰めようと努めました。その頃、デムネのしたことを心よく思っていなかったケリレは、デムネを叱責し、そのような行いの結果がどのようなものになるかをデムネに諭していました。こうしてとうとう、ある晩のこと。ヒョウがケリレとデムネの会話を聞いてしまい、ライオンの母親にそのことを伝えたのです。ライオンの母親は、そのような不当な出来事にショックを受け、そこで聞いたこと、つまり牛とライオンの仲に嫉妬したデムネが、2人に嘘を伝えて仲たがいさせ、結果的にライオンが牛を殺すことになったという事実を息子のライオンに伝えました。そして、息子に対し、牛のかたきを取るよう勧めました。その後、関係者が集められ、デムネは数々の証言から処罰を受けることになりました。こうしてライオンはデムネに死刑を宣告したのです。

いかがでしたか? この物語の主な登場人物は、欲が深くて狡猾なデムネ、デムネの友人であり、慎重で先のことを考えるケリレ、単純な性格の牛、森の王様であるライオン、物語の鍵を握るヒョウ、そして非常に賢く論理的なライオンの母親です。ライオンと牛の物語は、ケリレとデムネの物語の第一章に出てきます。そのため、この本のタイトルにもなっており、全ての翻訳本でもそのまま使われています。物語の主なテーマは、嘘を吹き込むことです。悪いたくらみを抱く人のそれによって、友情が壊されてしまいます。しかし、この物語で描かれているのは、ライオンと牛の間の出来事だけではありません。嫉妬、システムに対する反抗、軽率さ、欺きや策略、弱者のおとなしさも、この物語の中で描かれています。ライオンと牛の物語の他にも、ケリレとデムネの言葉による物語が18本あります。これらの物語では、道徳的、社会的な問題が提起されており、王や王族の状態に関する多くの秘密が暴かれています。そのため、こうした物語を社会学的に調べてみると、様々な政治的、社会的な問題を理解することができるでしょう。

ここからは、英雄の性質を持つ人物や様々な問題に対する彼らの見方を代表するような言動について見ていきましょう。物語は、人間の世界で見られることを前提にしています。先の物語では、ある商人が息子たちに商売を勧めます。彼らの一人は取り引きのために世界各地を旅します。彼には2頭の牛がおり、それに荷物をつないで旅に出ます。しかし、道の途中で泥沼にはまってしまい、1頭は死に、もう1頭は怪我をしただけで、何とか自力で泥沼を脱出します。それからこの牛は、近くにあった、ライオンの領土である草原にたどり着きます。ここから、物語は動物の世界に入り、実際に、本題に入っていくのです。

この物語では最初から、登場人物のそれぞれの特徴が述べられています。ライオンは若くて威厳のある支配者です。デムネは野心家で嫉妬深く、ケリレは後先のことを考え、慎重で賢い存在です。デムネは様々な出来事の鍵を握っており、物語は、彼の決断や目的と共に進められます。概して、この物語では、特別な目的を持った幾つかの動きが見られます。まず、デムネが行動を起こし、ライオンに近づき、彼が不安を抱いている理由を知ろうとします。ライオンの不安は、デムネを喜ばせます。なぜなら、その弱点を利用すれば、ライオンに取り入って引き立ててもらえる可能性が出てきたからです。しかしケリレは、デムネがライオンを騙すことを阻止しようとし、そのようなことはジャッカルにふさわしくない行いだといさめます。しかし、そのようなチャンスをずっと待ち続け、より高い地位を手にしたいと野望を抱くデムネには、自分の決断を覆すつもりはありません。こうして、ケリレとデムネは長いこと言い争いましたが、結局、デムネは自分の陰謀に着手します。

目的を達成するためには、その準備が必要です。野心を抱いたデムネは、まず、ライオンのもとに行きました。デムネはライオンの許に行き、自分は何でもする用意があると伝えます。デムネは、自分の賢さをライオンに示し、謙虚な態度でライオンの関心をひきつけます。次第にライオンはデムネに心を許し、自分が不安を抱いている理由を打ち明けます。デムネはライオンを落ち着かせます。それから、自分の目的を果たすために牛をライオンに紹介します。牛はライオンに気に入られ、彼らはすっかり仲良しになります。ここでデムネは嫉妬心を抱くようになり、理性を失います。ここから後は、嫉妬心が、デムネの行動の原動力になります。王様に近づく、という目的を持って行動を始めたデムネでしたが、彼は全てを失ってしまったと考えます。デムネはもはや、正しく考えることができません。親友であるケリレがどんなに忠告しても、全く効果はありません。嫉妬心は、彼の目だけでなく、耳をも塞いでしまいます。こうして、デムネは牛を抹殺してしまうための方法を考えます。この部分は、この物語の中でも最も重要な部分です。その説明については、次回のこの番組で行うことにいたしましょう。

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