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2015/02/17(火曜) 20:16

ライオンと牛(2)

ライオンと牛(2)

これまでの番組では、ペルシャ語の民俗文学のジャンルの一つ、動物が出てくる物語について、その特徴を見てきました。前回は、インドの昔話、「ケリレとデムネ」から、ライオンと牛の物語をお聞きいただき、嘘を吹き込み、悪いことをたくらむことについてお話ししました。

 

牛は、ライオンの領土であった草原に着きます。その後、デムネという名のジャッカルによってライオンの宮殿に連れて行かれます。ライオンは牛とすっかり打ち解け、全ての事柄について牛に相談するようになりました。しかし、デムネはそれに対して嫉妬心を募らせ、仲間のケリレに忠告されたにも拘わらず、嘘を吹き込み、悪巧みによって、ライオンと牛の仲を壊そうとします。デムネが牛についてライオンに吹き込んだ言葉が原因となり、牛が殺されてしまいます。しかし、真実は必ず明らかになります。デムネの吹き込みも明らかになり、彼は死刑を宣告され、その誤った行いの報いを受けることになるのです。

この物語の主な登場人物は、ライオン、ケリレ、デムネ、牛、ヒョウ、ライオンの母です。この物語のテーマは、嘘の吹き込みであり、悪意を抱く人物によって、2人の友人の仲が引き裂かれてしまいます。嫉妬、現在の関係に対する反抗心、軽率な行動、策略、単純で弱い立場の人への抑圧、これらも、牛とライオンの物語の重要なテーマです。デムネは、自分の目的を果たすために、物語の中で幾つかの重要な行動を見せ、そのたびに、ケリレに反対されます。最初は、ライオンに取り入るために、彼のことを心配しているふりをします。二つ目は、ライオンに牛を紹介します。三つ目は、牛とライオンが仲良くなったとき、彼らそれぞれに、互いのことを悪く言い、牛とライオンの仲を裂こうとするのです。

実際、デムネの三つ目の行動は、デムネの牛に対する嫉妬心からくるもので、牛を亡きものにすることを目的にしています。ケリレは、デムネにそのようなことはしてはいけない、そんなことは不可能だと忠告しますが、デムネは、策略や考えによって手に入れられるものは、力ずくでは手に入らないと主張します。デムネは、狡猾に振る舞い、ライオンの支持を取り付けることによって、牛に関する嘘の言葉を吹き込みます。牛が反逆を企て、軍の指導者たちと相談していると嘘をつき、ライオンに、急いで適した対策を講じた方がいいと、しきりに勧めます。ライオンは最初、デムネの言葉に耳を傾けようとはしませんでしたが、ついにデムネの言葉が効果を発揮し始めます。デムネの行動は、そこで終わりません。彼は目的に達するために、別のことも行う必要がありました。デムネは牛の許に行き、牛にも、ライオンが彼の命を狙っていると吹き込みます。牛は、不安や恐怖を感じる必要はないと言いますが、次第に疑いを抱くようになり、ライオンの獰猛な性質を恐れるようになります。

デムネの嘘の吹き込みや悪巧みにより、牛はデムネに、自分はどうしたらよいのかと相談し、デムネもまた、ライオンと戦うべきだと提案します。牛は、自分から戦いなどしかけることはできないといいますが、デムネは、ライオンの怒りは激しく、彼は牛を殺そうとしているのだと唆します。こうして牛はライオンの許に行き、戦いの決意を固めます。ライオンも牛の様子を目にし、牛を殺すために襲い掛かり、牛を殺してしまいます。この後は、得に重要な出来事は起こらず、ケリレとデムネの会話、そしてデムネの醜く悪い行いの結果が語られます。ここからは、物語の道徳的な教訓に入ります。ケリレは、デムネの目的を明らかにし、デムネにこう語ります。「君が無知だから、他人を犠牲にしてまでも、自分の利益を追い求めるのだ。君は誰でも近づいてくるものにとげを刺し、怪我をさせるバラの花と同じだ」

デムネの次の行動は、後悔に苛まれるライオンを慰め、全ては正しく、当然の結果だったのだと説得することでした。しかし、それはうまくいきません。デムネは非難を向けられ、投獄され、殺されてしまいます。物語のこの部分は、特に際立った特徴はなく、登場人物の間の会話に終始します。物語の最大のテーマは、嘘をついて2人の仲を引き裂き、敵対を生じさせることです。しかし、この物語の中では、嫉妬も大きな鍵を握っています。嫉妬は、悪巧みや告げ口のきっかけです。嫉妬や怒り、強欲といった卑しい性質は、人間の心に生じたとき、簡単には追い払うことができません。このような性質は、習慣になってしまうと、人間の意志や意識とは関係なくなります。そのため、時に嫉妬は、その人の意思の及ばないものとなります。この物語の中では、性質の良し悪しが説明される以上に、それらの性質の明らかな側面、それらがもたらす良い結果、悪い結果が説明されています。物語の主な登場人物であるデムネは、初めは、社会的な地位を手にしたいという強い願望を持っています。そのため、様々な出来事を、自分に有利なように利用し、ある程度は成功も収めます。しかし、地位や権力を求める心が彼の理性を失わせ、自分の行いの結果について考える力を奪ってしまうのです。

牛がライオンの側近になり、デムネの存在が忘れ去られるようになると、デムネの中に嫉妬心が芽生え始め、地位や権力を求める気持ちが強くなりました。デムネは、自分がライオンの許で築いてきた地位を他人に取られてしまうことに耐えられなかったのです。この物語は、道徳的な内容を提起し、分析すると共に、私たちに、このような性質を持つことの結果を伝えています。普通の人々にもあてはまるようなテーマを、重要なことのように見せ、読み手や聞き手の興味をひきつけるのは、古い物語の特徴の一つです。例えば、裏切りは、普通の生活の中でよく見られる事柄ですが、それが王様の宮廷で起こったときには、興奮や重要性が増し、誰もがそれに関心を持つでしょう。多くの恋愛物語でも同様です。つまり、愛する人と愛される人が王族であったり、少なくとも一人が王族で、もう一人が身分の低い人物であった場合には、人々の関心や興奮が増し、あたかも、恋愛が王族に限られたもの、嫉妬は宮廷の中だけで起こるものであるかのように捉えられがちです。しかし、このような物語においては、恋愛や嫉妬といったテーマが動物によって語られることから、こうしたことが、あらゆる階層の人にとっても起こりうることが明らかになります。

ライオンは、デムネが嘘をついているといった母親に対し、このように語っています。「王様の側近のやることは、嫉妬、悪い行い、争いである。なぜなら、誰でも、偉い立場の人に自分の期待や希望を寄せるからであり、人々の間には常に、地位を手にするための競争や嫉妬が存在する」 しかし、このような状況は、宮廷だけに限られません。嫉妬は、最も些細な価値のない事柄についても起こります。牛とライオンの物語では、悪巧みをしたり、嫉妬心を抱いたり、先を見越さずに軽率になることの結果を目にすることができます。

ライオンと牛の物語が伝えようとしているもう一つのメッセージは、罪のない人の血を流し、圧制を加えれば、よくない結末が待っている、ということです。デムネの悪いところは、先見の明がなく、そのような行動によって、多くの道徳的な原則を踏みにじり、自分の目的のために手段を選ばず、それに近づくためなら、道徳に反していても、どんなことでもせざるを得なくなる、ということに気づいていないことです。この物語の中で、ケリレはデムネにこう言います。「王様は常に、美徳を持つ人間を優位に立たせるわけではなく、自分の側近にばかり注目し、跡継ぎのことばかりを考える」 これに対し、デムネはこう答えます。「王様の教友たちも、前からそのような地位についていたわけではなく、だんだんとその地位に辿りついたのだ。注目すべきなのは、この道には様々な困難があるが、それらを忍耐強く乗り越えることが必要だ、ということだ。このようなやり方を取れば、自分の目的を果たすことができる」

物語の中で、悪役を演じているデムネの口から、このような言葉が発せられています。デムネはなぜ、他者の命を奪い、騒ぎを起こし、他者を欺くということを受け入れたのでしょうか。明らかなのは、途中から、彼の本能が理性を上回ってしまったことです。デムネは、物語のいたるところで、友人であるケリレの質問にしっかりと答え、ケリレを説き伏せます。最後まで満足していなかったライオンでさえ、デムネに対して疑いを抱くことはなく、目撃者の証言を中傷だと見なします。しかし、最終的に、デムネは自分の道徳に反した行いの報いを受けることになるのです。

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