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2015/04/07(火曜) 22:48

神を信じる金細工師の物語

神を信じる金細工師の物語

子守唄は人間の生活の中で生まれ、実際、母親の願いや思いを歌ったもので、口から口へと語り継がれてきました。子守唄は独特の簡潔なリズムがあり、その内容は、飾り気のないシンプルなものです。この2つの特徴により、芸術的で分かりやすい形で、子供たちに貴重な教育が施され、彼らの性質に影響を及ぼすことができます。子守唄と普通の詩を分けるのは、それを歌う人たちの歌い方にあります。子守唄は正式な詩人に歌われるものではなく、優しい母親たちの情熱が高まった際に創られています。母たちは、このとき、すぐに思いつく最も簡単な単語の助けを借りて、そこにメロディを吹き込みます。そのため、多くの子守唄は、文学的には問題があり、古典的な詩の法則を外れています。しかし、そのような不規則性こそが、子守唄の特徴を示しているのです。

 

韻律は、子守唄の中で最もよく使われるスタイルとなっています。子守唄は、言葉を飾るスタイルをとっていませんが、様々な民族の口承文学において、その地位を確立し、次の世代に伝えていくことができています。多くの偉大な音楽家が、大抵、自らの活動の傍らで、子守唄も作っています。このような子守唄は、郷愁を伴い、われを忘れさせ、子供の頃に聞いたことのある懐かしいメロディを思い出させるのです。子守唄は、通常、文学的な法則を持たず、時には、論理的な意味すらないことがあります。子供は、歌詞の意味ではなく、そのメロディの中に言葉の美しさを見出します。子供は、音楽や言葉の遊びの中で、意味のない単語を楽しみます。そのため、子供の世界においては、意味のない詩や遊びが広まっているのです。

子守唄では、花や水、泉といった自然の要素が多く使われますが、それは、子守唄が作られた経緯を示しています。イランの子守唄は、喜びよりも、むしろ悲しみを含むものが多く、それは分析に値します。この他、子守唄は、口承文学や民俗文学の要素が強く、残念ながら、正式に書きとめられているものが少ないため、忘れ去られたり、時と共に変更が加えられることが多くなっています。

ここからは、イランに伝わる物語をご紹介しましょう。今回お話しするのは、神を信じる金細工師の物語です。

昔々のこと。ある町に、神を信じる誠実な金細工師が暮らしていました。彼は毎日、朝、太陽が昇る前に仕事場にやって来ました。彼の店は、為政者の宮殿の前にありました。彼は店を開ける前に天を仰いで両手を上げ、「英知を広げる神よ、日々の糧を与える慈悲深い方よ、あなたの力は無限です。あなたは全能であられます。何かが海の底に落ちたら、あなたはその力で、それを陸地に戻すでしょう」と祈り、それから店を開けていました。

その頃、為政者はベッドの中にいました。部屋の窓が開いていたので、毎日、金細工師の祈りによって、彼の心地よい眠りが壊されていました。ある日のこと。金細工師の祈る声で目覚めた為政者は、怒って叫びました。「毎朝、私の心地よい眠りの邪魔をする奴は誰だ?」
為政者は召使いを呼び、それが、宮殿の目の前にある店の金細工師の声であることを悟りました。そこで、自分の眠りを壊す人物を懲らしめてやることにしました。為政者は大臣を呼び、宝石の指輪を手にして、大臣と共に宮殿を出ると、金細工師の店へと向かいました。

金細工師は、為政者が店に向かってくるのを見て、驚きました。為政者は貴重な指輪を金細工師に見せ、言いました。「この指輪には、何千個分もの金貨ほどの価値がある宝石がついている。私はこれをなくしてしまうのが怖いのだ。そこで、色の付いたガラスで、これと全く同じものを作ってほしい。私はふだんは偽物の指輪を使い、重要な式典にでるときだけ、この貴重な指輪をつけることにする」 それから、その指輪を金細工師に渡し、それをなくさないようにきちんと保管するよう頼みました。

金細工師は指輪を受け取り、小さな箱にしまいました。それから金庫を開けて、その箱を金庫の中にしまいました。金細工師が金庫を閉めようとしたとき、為政者は彼に、水をいっぱいくれないかと言いました。金細工師はすぐに水を取りにいきました。為政者も、急いで立ち上がり、金庫の扉を開けて、指輪を取り出し、自分のポケットにしまいました。ちょうどそのとき、金細工師が戻ってきて、水を為政者に渡しました。為政者は金細工師に、自分が行く前に金庫の扉を閉めるよう求め、金細工師もそれに従いました。最後に、為政者は言いました。「3日後までに、偽物の指輪を作っておいてほしい。4日目の朝に、それを本物の指輪と一緒に受け取りにくる。だが、私の指輪はくれぐれも大切に保管してほしい。もし亡くなるようなことがあれば、首を断ってやる」

為政者は大臣と共に店を出て、海岸へと向かい、船に乗りました。船がずいぶん遠くまで進んだところで、為政者は指輪を海の中に投げ捨て、それから宮殿に帰りました。

金細工師は店を閉め、急いで家に帰り、妻にその日の出来事を話しました。妻は彼に言いました。「すぐに店に戻った方がいいでしょう。偽物の指輪を作る前に、為政者の指輪を放置してはなりません。もし指輪をなくせば、首を切るといわれたのでしょう。すぐに店に戻るのです。一瞬たりとも、本物の指輪から目を離してはなりません」
金細工師は急いで店に戻り、金庫の扉を開けました。そして、指輪を入れた箱を取り出しました。しかし中は空でした。金細工師は驚きました。指輪はどこにいってしまったのでしょう。そのとき、金細工師の妻が夫のために食事を持って店にやってきました。妻は夫の様子が変である気づきました。金細工師は妻に言いました。「指輪がない」 妻は顔を叩き、夫と共に、一日中、指輪を探し回りましたが、結局、見つかりませんでした。

3日が過ぎました。為政者が金細工師の祈りの声を聞くことはありませんでした。為政者は大臣を呼び、言いました。「私の計画が成功したようだ。金細工師は、毎朝、私の眠りを壊していた、あの祈りをやめたようだ」 しかし、4日目の朝、為政者は、空に響く、金細工師のいつのもの祈りの声で目を覚ましました。腹を立てた為政者は、金細工師の店に入りました。召使も剣を手にし、為政者の後に続きました。為政者は、金細工師がうれしそうな様子であるのを目にし、怒りを増幅させ、大きな声で言いました。「3日がたった。すぐに2つの指輪を持ってきなさい。それができなければ、召使がお前の首をはねることになる」
金細工師はゆっくりと金庫をあけ、中にあった箱を出し、その中から2つの指輪を取り出しました。彼が、本物の指輪と、自分で作った偽物の指輪を為政者に示したとき、為政者はたいそう驚き、おおきな声を上げました。「こんなことが信じられるか! 私の指輪をどのようにして手に入れたのだ? これほどそっくりの指輪を、どのようにして作ることができたのだ? 私がこの手で、あの指輪を海に投げ入れたのだ」

金細工師は言いました。「私と妻が、もう指輪は見つからないと諦め、私も店に来る気力を失い、家にこもっていました。2日間、私は食事を口にすることができませんでした。そんなとき、妻が市場に行き、魚屋で大きな魚を買ってきたのです。妻がその魚の腹を切ったとき、中から高価そうな輪が出て来ました。それを洗ってみると、何と指輪でした。妻がそれを私に見せました。私は叫び声をあげました。『これは為政者の指輪だ!』 それからそれを手にし、すぐに店に行って、作業に取り掛かりました。徹夜で作業を続け、あなたに頼まれた指輪を作ったのです。作業が終わったとき、店の前に立って、あなたが聞いた祈りを捧げました」

為政者は、今耳にしたことが信じられず、ただ驚いていました。そして、両手を伸ばして金細工師を抱きしめ、彼の両手を握り締めながら言いました。「あなたは本当に善良な人物だ。私はあなたにしたことを心から謝りたい」
為政者は召使いに、金細工師のために1万ディナールの入った袋を用意するよう命じました。それから金細工師に言いました。「毎朝、その純粋な祈りによって、私を目覚めさせてくれるよう命じる。あの祈りを聞かせてほしい。『英知を広げる神よ、日々の糧を与える慈悲深い方よ、あなたの力は無限です。あなたは全能であられます。何かが海の底に落ちたら、あなたはその力で、それを陸地に戻すでしょう』」

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