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2015/05/19(火曜) 22:46

ナッガーリー(1)

ナッガーリー(1)

今回も前回に引き続き、ペルシャ語の民俗文学のジャンルの一つ、ナッガーリーについてお話しすることにいたしましょう。

 

ナッガーリーは、昔から世界のすべての民族の間に広まってきた物語のスタイルで、世界の宗教的な物語や英雄伝の多くは、書物として記述される以前に、語り手によって人々に伝えられてきました。フランスの研究者、ジュリウス・モール氏によれば、人々の口から口へと伝えられた口承文学は、各国の歴史の根本であり、歴史はそこから始まっています。なぜなら、人間は書き記す前に物語を語り、詩を歌ってきたからです。こうした物語の語り手はナッガールと呼ばれ、ナッガーリーとは、特別なジェスチャーを交えながら、物語を語ることを指します。イランの民俗文学の研究者であるマフジューブ氏は、「ナッガールたちは、伝説や神話を語ることに長け、それによって生計を立てている」と語っています。

物語を語る風習は、非常に古い時代からイランに存在してきました。イランでは、村人たちの間で、英雄伝や民族物語を暗記する伝統が続いていました。その時代、彼らは土地を持つ貴族であり、自分の祖先の歴史を大切にしていました。古い資料から、口承文学を語り、戦争で勝利した物語や英雄たちのことを暗記する伝統は、イスラム以前からイランに広まっていたと考えることができます。それを証明するのが、中世ペルシャ語で書かれた「1000の物語」という本です。その元となるものは、イスラム初期にも存在し、著名な「千一夜物語」の基盤ともなりました。

サーサーン朝末期、イランでは、「ホダーナーメ」と呼ばれる本が中世ペルシャ語で記されました。この本には、当時の皇帝たちの出来事について記されており、イランの古い物語が集められています。イランの学者、イブン・モガッファは、この本をアラビア語に翻訳しました。この本の作者は不明ですが、当時、物語を語るナッガールたちが社会で高い地位を得ており、最も文化的な人々であったことがこの本からうかがえます。

イスラム期にも、ナッガーリーが広まっていて、シャーナーメやギャルシャースプナーメの他、サムアクアイヤールやダーラーブナーメ、バフティヤールナーメなど、有名な物語は、元々、伝承や物語の形で、長い歴史の中で、物語の語り手やナッガールたちによって語り伝えられてきました。これらの物語は、口承文学と同じように、口から口へと伝えられていきました。

イランのナッガールは、長い歴史を持っているため、イランの民族的な伝統や文化の保護において、非常に重要な役割を担ってきました。特に、多くの人が読み書きの出来なかった時代には、神話や伝説、宗教の教えを口承の形で伝えるスタイルが広まっていました。ナッガーリーは、サファヴィー朝時代に隆盛期を迎え、現在まで続いています。

ここからは、ジョウザルとシャマルダルの宝箱の物語の続きをお話ししましょう。ジョウザルは、シャマルダルの宝箱を手に入れ、それをアブドルサマドに渡した後、彼からもらった魔法の袋を持って故郷の町に帰りました。しかし、ジョウザルが母親のために残したお金を、兄弟たちが母から奪い、去って行ってしまったため、母親は飢えに困って物乞いをしていました。ジョウザルは母親を家に連れて帰り、魔法の袋を使って、色とりどりの料理を並べました。今夜は、その続きです。

ジョウザルは、袋の秘密を母親に打ち明け、その秘密を誰にも言わないようにと頼みました。ジョウザルの兄弟たちは、母親から無理やり奪った金の全てを使い果たし、家に帰って来ました。ジョウザルはいつものように彼らの過ちを許し、彼らのことを家に迎え入れました。ジョウザルは毎日、多くの料理を用意し、みんなでそれを食べ、残りを貧しい人たちに分けていました。

ある夜、ジョウザルが寝ている間に、料理の秘密を教えてほしいという兄弟たちの要求に耐えられず、母親はその秘密を教えてしまいました。そして、そのことを誰にも言わないようにと口止めしました。ジョウザルの兄弟のサリームとサーレムは、魔法の袋を奪うための計画を立てました。そして、船の船長に対し、大金を払うから、ジョウザルが眠っている夜の間に彼を遠くに連れていってほしいと頼みました。夜中になりました。ジョウザルが深い眠りについている間に、サリームとサーレムは船長の2人の友人と一緒にジョウザルのところに行き、彼の手と口をしばり、彼を家から連れ出しました。2人の友人と船長がジョウザルを抱きかかえ、船に乗せました。船は海に入り、海の旅へと出て行きました。

朝になりました。サリームとサーレムは母親に対し、「ジョウザルは友達と一緒に出て行った」と言いました。母親は深く悲しみ、ジョウザルと離れ離れになってしまったことに涙を流しました。サリームとサーレムは言いました。「あなたはジョウザルのことを僕たち以上に愛しているようですね」 すると母親は言いました。「あなたたちも私の息子です。でも、あなたたちは父親が亡くなってから、非常に悪い行いしかしていません。反対にジョウザルはいつも、私に優しくしてくれました」

サリームとサーレムはその言葉を聞いて腹を立て、母親に対して暴力を振るいました。それからジョウザルの2つの袋を奪いました。袋の一つには金や宝石が入っていました。それを2人で分けましたが、もう一つの魔法の袋を巡ってはけんかになりました。彼らが袋を引き裂きそうになったとき、母親が叫びました。「その袋は分けられないものです。もし半分にしてしまったら、効果を失うでしょう。それを私に預けてください。そして、いつでもおなかがすいたら、私のところにそれを受け取りに来ればいい」 しかし、サリームとサーレムは母親の言葉に耳を貸しませんでした。魔法の袋を巡る2人のけんかは朝まで続きました。

そこへたまたま、彼らの近所の家に、王様の兵士がやって来ていました。彼は、サリームとサーレムのののしりあう言葉を耳にし、魔法の袋の秘密を知りました。そこで、翌朝、宮殿に帰ると、前の夜に聞いたことの全てを王様のために説明しました。王様は、役人たちにサリームとサーレムを捕らえるよう命じました。2人の兄弟は捕らえられ、王様の許に連れてこられました。彼らは厳しい拷問にあい、とうとう魔法の袋を持っていることを白状しました。王様は魔法の袋を彼らから奪うと、2人を投獄しました。

一年が経ちました。サリームとサーレムは王様の牢獄に捕らえられたままで、ジョウザルも、船の中で仕事をしていました。ある日、海が嵐になり、船が沈んでしまいました。この事故で、ジョウザルの乗っていた船の乗組員は、ジョウザルを除いて全員、命を落としてしまいました。ジョウザルはやっとのことで海岸に着き、歩き始めると、サウジアラビアに向かっていたキャラバンに出会いました。そのキャラバンのリーダーは、優しい心を持った商人でした。彼はジョウザルを見てそれまでのいきさつについて聞くと、自分と一緒に来て、働いてくれないかと頼みました。ジョウザルもこの申し出を受け入れ、キャラバンの一行に加わることになりました。

彼らは、ジッダという町に着きました。おりしも、それはちょうどハッジ・メッカ巡礼の時期でした。商人の男は、神の家・カアバ神殿に巡礼に行くことを決め、ジョウザルと一緒にメッカに向かいました。メッカ巡礼の儀式の一つとして、ジョウザルがカアバ神殿の周りを回っていると、突然、見覚えのある人を見かけました。それはなんと、アブドルサマドでした。ジョウザルは彼に近づき、あいさつをしました。アブドルサマドは、ジョウザルを見て喜び、彼と抱き合い、尋ねました。「一体ここで何をしているんだい?」 ジョウザルは自分のそれまでのいきさつを彼に語って聞かせました。アブドルサマドはジョウザルを自分の家に連れて行き、もてなしてから言いました。「ジョウザルよ、私は、あなたの困難な日々は終わったと予言しよう。ハッジの儀式を終え、私と一緒に来るのだ」 ジョウザルは商人に礼を言い、彼と別れてアブドルサマドの許に行きました。

アブドルサマドは、シャマルダルの宝箱から持ってきていた印章つきの指輪をジョウザルに与えて言いました。「この指輪をあげよう。いつでも何か願いがあるときに、その印章をこするといい。すると、ラアドという名前の指輪の召使いが出てきて、あなたの願いを叶えてくれるだろう。今からこの指輪の持ち主はあなただ」 そうしてアブドルサマドは、自分で印章をこすりました。ラアドが出て来ました。アブドルサマドはラアドにジョウザルを紹介し、「これからは、ジョウザルがあなたの主人になる」と言いました。[ラアドはジョウザルに向かって言いました。「分かりました。ご主人様」

ジョウザルは少し考えてから言いました。「ラアドよ、私を故郷の町に連れて行ってくれないか」 それからジョウザルはアブドルサマドに別れを告げ、印章つきの指輪をはめて、ラアドの背中に乗りました。ラアドは大声で吼えると、空中に浮かびあがりました。そして何時間も空を飛び続けました。夜中になった頃、ラアドはジョウザルを家に送り届けると、そのまま姿を消しました。さて、この続きは、次回のこの番組でお送りいたします。

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