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2015/07/05(日曜) 21:20

ナッガーリー(2)、ナッガール

ナッガーリー(2)、ナッガール

口承文学や物語は、昔から、口から口へと語り継がれてきたもので、各国の国民の歴史の一部を担っています。これらの物語は、ナッガールと呼ばれる語り手によって語られています。ナッガールたちは、一般に農村階級の出身者でした。彼らは、土地を持つ貴族であり、先祖の物語に関心を持っていました。また、中世ペルシャ語で記された1000の物語やホダーナーメなどの本は、イランにおけるナッガーリーの歴史を物語っています。また、当時、ナッガールたちは、社会において高い地位を有しており、最も文化的な人々だったことが明らかになっています。

 

イスラム以前のイランのナッガーリーの歴史に関する情報は、ほとんど残っておらず、その多くは、歴史書や旅行記、ゾロアスター教の宗教書から得られています。一部の物語は、アーリア人の時代から語り伝えられてきました。10世紀のイランの学者、イブン・ナディームは、アルフェヘレストという本の中で、次のように語っています。「イランの人々は、最も古い伝説や神話を記し、それを書物の形にして保管し、動物の言葉で語っていた。その後、アルサケス朝の王たちが、そこに幾つかの事柄を加え、アラブ人がそれをアラビア語に翻訳した」

研究者たちによれば、古代の資料を見ると、物語が音楽を伴って語られていたことが分かります。パルティア帝国時代のウィースとラーミーンという韻文では、2箇所で、グーサーンという単語が使われています。グーサーンとは、歌を歌う人、楽器をひく人を指す言葉です。ウィースとラーミーンの物語は、当初、グーサーンたちによって語られ、その後、書物に記されました。グーサーンたちのうち、一部は宮廷に留まりましたが、一部は様々な町を旅しながら、物語を語っていました。ロンドン大学のイラン学者、メリー・ボイス氏は、パルティア帝国のグーサーンたちについて、詳しい研究を行いました。その結果は、イランの演奏の伝統とパルティア帝国のグーサーンという本の中に書かれています。ボイス氏によれば、イランの王たちには常に演奏者がいて、彼らの娯楽は音楽であり、宮廷の祝祭には、物語の語り手や楽器の奏者が参加し、彼らの多くは詩人だったということです。アルサケス朝やサーサーン朝の宮廷のグーサーンは大きな影響力を持ち、王や普通の人たちを楽しませていました。彼らの最大の特徴は、ナッガールたちのように、当時の現実、事実を語ることにありました。

ここからは、イランの物語をお届けします。前回に引き続き、ジョウザルとシャマルダルの宝箱の物語をお送りしましょう。

ここからは、ジョウザルとシャマルダルの宝箱の物語をお話しましょう。ジョウザルの兄弟たちは、船の船長に、ジョウザルを海の彼方に連れ去るよう求めました。この陰謀を実行した後、兄弟たちはジョウザルの魔法の袋を自分たちのものにしようとしました。しかし、仲たがいをしてしまい、結局、魔法の袋は王様の手に落ちました。一方のジョウザルも、船長の手を逃れ、メッカへの旅の中でアブドルサマドに再会し、アブドルサマドから、印章つきの指輪をもらいました。その指輪の印章をこすると、ラアドという名前の召使いが現れ、その持ち主の命令を聞きました。

ジョウザルは、アブドルサマドからもらった魔法の指輪と共に家に戻り、母親からそれまでのいきさつを聞くと、指輪をなでてラアドを呼びました。そして、兄弟のサリームとサーレムを連れてくるよう命じました。驚く母親の目の前で、地面が裂け、ラアドがその中に入って行き、2人の兄弟を肩にかついでジョウザルの前に戻ってきました。サリームとサーレムはジョウザルを見ると泣き出し、自分たちを許して欲しいと頼みました。ジョウザルは今度も、彼らを許しました。

ジョウザルは、魔法の袋が王様の金庫にあることを悟り、ラアドに対し、王様の金庫をそこに持ってくるよう命じました。ラアドもそれを実行し、ジョウザルは魔法の袋を手にすると、豪華な宮殿を用意するようラアドに命じました。ラアドもそれを実行し、ジョウザルは宮殿を母親に与えました。その頃、王様の宮殿では、金庫の係りが、中身が空であるのを目にし、叫び声をあげながら、王様のところに行き、金庫が空であることを知らせ、魔法の袋もなくなっていると告げました。王様は、警備隊と郡の司令官たちを呼び出しました。しかし、誰も真相を知る者はいませんでした。それを知っているのは、以前に魔法の袋の存在を教えていた男だけでした。男は言いました。「王様よ、私は昨夜、ある場所を通ったときに、宮殿を建てている人たちを見ました。そして今日、その宮殿が出来上がっていたのです。色々と尋ねてみると、その宮殿の持ち主は、ジョウザルという名前でした。最近、旅から戻ったばかりで、多くの富を持ち帰り、2人の兄弟を牢獄から助け出したということです」

王様は大声で叫びました。「私の敵が誰だか分かったぞ。サリームとサーレムを逃がし、私の金庫を空にしたのは、そのジョウザルという人物以外にない」 それから、彼を捕らえて連れてくるよう命じました。賢い人物であった大臣は言いました。「彼は一夜で宮殿を建てることのできる人物なのだから、きっとたいそうな力を持っていることでしょう。何か対策を練らなければ。彼を宮殿に招待し、強みと弱点を理解した上で、それに合った対策を考えた方がいいでしょう」 大臣は白い服を身につけ、一人でジョウザルの宮殿に行き、そこにいた見張りの人物に挨拶をしました。見張りの男は大臣に挨拶を返して言いました。「人間よ、あなたは何者で、ここに何の用事で来たのか?」 大臣は、見張りの男が彼を人間と呼んだのを聞いて震え上がりました。見張りの男は人間ではなく、魔人だったのです。そこでゆっくりと言いました。「私は王様の大臣です。あなたの主人を王様の宮殿の宴会に招待するためにここにやってきました」 見張りの男は、ジョウザルの許可を得て、大臣を宮殿の中に案内しました。大臣は一礼して言いました。「王様があなたを宴会に招待しています」 ジョウザルは言いました。「私は王様の宮殿には行かない。王様が私に会いたければ、自分でここに来ればよい」 それからラアドを呼び出し、世界で最も美しい服を大臣のために用意するよう命じました。

大臣は王様の宮殿に帰りました。そして、自分が来ている服を王様に示し、ジョウザルの宮殿で見たり聞いたりした出来事を伝えました。王様は、ジョウザルに会いに行くことにしました。そこで、軍隊を伴って、ジョウザルの宮殿に向かいました。ジョウザルは、王様が軍隊を引き連れてやってくると聞くと、多くの魔人を宮殿に連れてくるようラアドに命じました。そして、精霊たちに軍服を与え、宮殿内に整列させました。

王様は軍隊と共にジョウザルの宮殿に着きました。そこで、大勢の魔人の軍勢を目にし、自分たちの力がジョウザルには及ばないことを悟りました。ジョウザルは豪華な部屋の王座に座っていました。サリームとサーレムは、2人の大臣のように、彼の両側に立っていました。王様はジョウザルに近づき、挨拶をしました。ジョウザルは立ち上がり、王様に挨拶を返しました。そして、豪華な料理でもてなしました。彼らは夜中まで食事を共にし、語り合いました。王様が帰ろうとすると、ジョウザルは、王様の軍隊に高価な贈り物をするよう命じました。それから王様に別れを告げ、再び会いにきてほしいと言いました。王様もそれを受け入れ、その後何度か、ジョウザルの宮殿に赴きました。

こうしてしばらくが過ぎました。ジョウザルと王様はすっかり仲良くなりましたが、王様はそれでも、心の中でジョウザルの力を恐れていました。ある日、王様は大臣を呼び出し、言いました。「大臣よ、私はジョウザルが、私への憎しみを抱いていないか、いつか私を殺して私の位を奪うのではないかと不安で仕方がない」 大臣は言いました。「あなたはジョウザルをライバルと見なしているのですから、彼をあなたの娘と結婚させてはどうでしょう。そうすれば、彼はあなたの娘婿となり、もし彼が死んだら、彼の富はあなたのものになります」
王様はこれに賛成し、大臣の勧めで、盛大な催しを開き、ジョウザルをそれに招待しました。ジョウザルは宮殿にやってきて、王様の隣に座り、仲良く語らいあいました。数時間後、王様の美しい娘が部屋に入ってきました。ジョウザルは娘を見て、すっかり気に入ってしまいました。大臣はそれに気づき、ジョウザルに近づいていって言いました。「もし王様の娘が気に入ったのなら、彼女と結婚できる方法があります」

ジョウザルは言いました。「もしその方法を実行してくれれば本当にありがたい」 大臣は王様のところに行き、それまでのいきさつを話しました。そして、娘のために莫大な額の婚資金を要求するよう言いました。王様は魔法の袋を、娘の婚資金として求め、ジョウザルもそれを受け入れました。盛大な式が催され、ジョウザルは王様の娘と結婚しました。

それからしばらく時が過ぎ、王様が亡くなり、ジョウザルが王座に着きました。彼はその土地の王となり、サリームとサーレムを大臣に任命しました。ジョウザルは公正で善良な王様となり、人々からも支持されました。こうして一年が過ぎました。サリームとサーレムは、ジョウザルを殺し、王座と指輪と魔法の袋を手に入れようと企みました。サーレムは、ジョウザルを自宅に招き、毒を入れた料理を出し、彼を殺し、指輪の持ち主になりました。サーレムは、ラアドを呼び出し、サリームを殺して、2人の兄弟の遺体を軍の司令官たちの前に置くよう命じました。ラアドもその命令を実行しました。軍隊は、恐怖を抱き、サーレムの指示に従うようになりました。そして、サーレムは自ら王様を名乗り、ジョウザルの妻と結婚することにしました。誰もそれに反対する勇気を持つ者はいませんでした。

その知らせがジョウザルの妻の耳に届きました。しかし彼女は何も言いませんでした。サーレムが妻の宮殿に着くと、ジョウザルの妻は彼を快く迎えました。それから、毒を入れた飲み物をサーレムに渡して言いました。「疲れが取れますよ、どうぞ飲んで下さい」 サーレムはその飲み物を手にし、一気にそれを飲み干しました。毒はすぐに回り、サーレムは倒れて死んでしまいました。王様の娘は印章のついた指輪を彼の指からはずし、それを壊して投げ捨てました。魔法の袋は2つに割れ、その効力を失いました。それから妻は、宮廷の偉人たちを呼び集めて言いました。「王様はたった今、亡くなりました。さあ、別の王様を選んでください」 それから、軍服を身につけ、涙を浮かべながら、優しい夫であったジョウザルのために祈りを捧げました。

 

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