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2015/09/16(水曜) 20:42

ナッガーリー(5)

ナッガーリー(5)

今回のこの時間も、前回に引き続き、ペルシャ語の民俗文学のジャンルのひとつ、ナッガーリーについてお話ししましょう。

 

古代イランにおいて、物語を語って聞かせる人たちは、宮廷でも人々の間でも、職業として広まっており、偉大な物語作品は、このころに生まれました。物語の語り手であるナッガールたちは、民族の古い伝統を保護する役目を果たしていました。彼らは詩を歌い、それを口から口へと伝えていました。イスラム以降のナッガーリーは、宗教的な要素を含むものと、そうでないものの2つに分かれていました。宗教的な要素を含まない物語は、簡潔で、物語が語られる際、寸分の間違いもなく、ある出来事から別の出来事へと物語が進んでいきます。語り手は常に、詩によって、物語を語り始め、それによって聞き手に物語の始まりを知らせています。

ナッガーリーの物語は、多くが空想的な側面を有し、観客も、そのことを知っています。それにも拘わらず、聞き手は物語に引き込まれ、興奮しながら、まるで本当にあった出来事であるかのように、それに聞き入ります。語り手と聞き手の関係は、教師と生徒のそれと同じです。語り手は、物語を通してメッセージを聞き手に伝え、常に、物語の間に教訓を盛り込みます。興味深いのは、こうした物語の合間に見られる教訓が、意味を全くそらすことがなく、それどころか、物語の理解を容易にし、語り手が何を言っているのか、聞き手により分かりやすくなる、ということです。

今日、ナッガールは、ガフヴェハーネと呼ばれる喫茶店や公共の場所、広場などで、独特の風俗習慣により、民族物語や英雄物語を語っています。ナッガールは長年に渡り、師匠のもとで教育されます。あるいは、長い年月をかけて、物語の語り手を聞き、そこから学ぶこともあります。ナッガールは、聡明で飲み込みが早くなければなりません。というのも、聞き手が何に注目しているのかを学び、それを語り、独創性によって、適切な場所で必要な変化を与えることができるよう、理解力を研ぎ澄ましておく必要があるからです。

ナッガールは、木の棒を手に握り、それを動かしながら、物語を進めていきます。語り手は、たった一人で物語を進めます。つまり、その人は役者でもあり、語り手でもあり、また監督でもあるのです。語り手は、容易にある役から別の役へと移り、語を進める計画を変更することなく、即興でテーマを変えていきます。ナッガール・語り手は、一度に数十人もの人たちを夢中にさせるのです。

ここからは、イランに伝わる物語をご紹介しましょう。今回もインドの昔話、ケリレとデムネから、4人の旅人のお話です。

4人の男が旅の途中で知り合いになりました。一人目は王様の息子、2人目は商人の息子、3人目は容姿の美しい男、そして4人目は、腕力の強い農民の息子です。皆、若くて貧しい男ばかりで、それぞれが、日々の糧の稼ぎ方について、自分の主義や考え方を持っていました。彼らは疲れと空腹に苛まれながら、ようやく町につき、町の近くに滞在場所を定め、毎日、順番に一人ずつ、町へと出かけて行き、自分の主義や考え方にしたがって、その日の食糧を手に入れることになりました。

一日目は農民の息子でした。彼は努力と労働によって金を稼ぎ、友人たちのために食糧を手に入れ、町の入り口の門に、こう記しました。「1日の努力の結果は1デルハム」 2日目は容姿の端麗な男の番でした。彼は美しさこそ、人間の役に立つものだと考えていました。しかし町へ行っても仕事を見つけることができませんでした。しかし、裕福な女性の目にとまり、金銭を手に入れ、町の門のところにこう記しました。「1日の美しさの対価は500デルハム」 3日目は商人の息子の番でした。彼は賢さ、知性こそが、人間の役に立つものだと考えていました。そこで、船に積まれた商品を先物として買い、買った値段よりも高い値段で売り、その売上金で商品の持ち主に代金を支払った後、友人たちのために食糧を結いしました。そして町の門のところにこう記しました。「1日の知性の対価は10万デルハム」

4日目は王様の息子の番でした。彼は運命こそが何よりもものを言うと考えていました。王様の息子が町に着いたとき、その町の王が亡くなったところでした。彼は疑いをかけられ、スパイの容疑で投獄されてしまいました。その翌日、王様の後継者を決めるため、長老たちの間で話し合いが行われました。そのとき、兵隊の対象が、スパイを捕まえたことを長老たちに伝えました。長老の一人が言いました。「スパイだと? すぐにその人物をここに連れてきなさい」 さて、前回はここまでお話しました。続きはここからです。

兵隊は数分後に両手を縛られた王様の息子を連れて来ました。町の長老の一人が、彼に尋ねました。「お前はどこから来たのか? なぜスパイ行為など行ったのだ?」 王様の息子は言いました。「スパイですって? 私は王様の息子です。私の町は、あなたたちの町の近くにあります。父が亡くなった後、兄弟が私に対して立ち上がり、権力を握りました。私は命の危険を感じ、そこから逃げてきたのです。ここに来る途中で3人の人たちと知り合いになり、彼らと一緒にこの町にやってきたのです。彼らは今頃、私が今日の食糧を届けにくるのを待っているでしょう」 そこにいた長老たちの何人かは、この王様の息子のことを知っていました。彼らは言いました。「彼が言っていることは本当だ。私は何度も、彼の父であった王の傍らに、彼がいるのを見たことがある」

町の長老たちは、彼こそ、その町の王様の後継者にふさわしい人物だという結論に達しました。あたかも、神がそのために彼をこの町に連れてきたように思えました。そうすれば、王様の後継者を決めるための言い争いも終わり、誰も抗議することはできません。若い王様の息子は、こうしていとも簡単にその町の王となりました。その町では、王様は就任1日目に白い象に乗り、町の中を回って人々にお披露目をする習慣がありました。若い王は、町の門のところに着きましたが、友人たちの姿はありませんでした。そこで、町の門の記し書きのある傍らに、このように記すように命じました。「知性と努力と美しさが意味を見出すのは、神の意志が伴ったときである。私のこのたった1日での幸福こそ、この言葉を証明するものである」

就任式と人々へのお披露目が終わると、若い王は宮殿に戻り、王座に座り、すぐに友人たちを宮殿に連れてこさせるため、役人たちを遣わしました。彼の友人たちは恐れおののき、何が起こったのかも分からないまま、宮殿にやって来ました。そして、自分の友人が王座に座っていることに驚きました。王は、彼らの近況を尋ねた後、それまでのいきさつを友人たちに説明しました。友人たちも、王の辿った運命にお祝いの言葉を述べました。しばらく話をした後、若い王は、知性を備えた商人の息子を大臣に任命しました。そして容姿の美しい男には多くの富を与え、別の町に行って商売を始めるように言いました。また腕力の強い農民の息子は、軍の司令官に任命しました。

若い王は、重要なことを発表しようとしていました。そこで、少し考えました。「今こそ、このことを発表するいい機会だ。全ての法学者、大臣、友人たちが今、ここにいる」 そこで、彼らに向かってこう言いました。

「私の友人たちよ。地球上に、この町に、そしてここにいるあなたたちの中には、知性、勇気、技術、美しさの点で私よりもずっと優れた人たちがたくさんいる。私は自分の知性にも、美しさにも力にも自信がない。自分の兄に陰謀を企てられ、権力を奪われたときから、私は生きる希望を失っていた。ましてや、このような大きな地位につくことになるとは思ってもいなかった。しかし、もし私が美貌や腕力を頼みにしていたならば、私は今、ここにはいなかっただろう。私は家を追われ、兄を恐れるあまりに、山や荒野を彷徨う若者であった。でも、神の意志と運命が、私をこの町へと連れ出し、このような地位に就かせたのだ。もし神の意志がなかったら、知性や美しさや努力によって、このようなことを成し遂げることなどできなかっただろう。もし、この町に来ていたとしても、多くの時を費やさなければならなかったはずだ。だから、全てのことは神の手の中にあり、神の意志がなければ、最も賢い人間であっても、大きな成功を手にすることはできない。私はそのような結論に達している」

若い王はそこで話を終えました。人々の中から一人の老人が立ち上がり、言いました。「王様、あなたが仰ったことは皆、最高の知性からくるものでした。本当にもし神の意志がなかったら、あなたが王座につくことはなかったでしょう。私も自分のこれまでの人生についてお話ししたいと思います」

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