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2015/10/17(土曜) 19:20

ラディーフ成立の過程(音声)

ラディーフ成立の過程(音声)

前回の番組では、イランの伝統音楽の規範的なメロディの集合体、「ラディーフ」と、それを構成するフレーズ「グーシェ」についてお話しました。その中で、ラディーフはダストガーと呼ばれるイラン音楽の旋法体系に分かれており、これを元に即興演奏や作曲が行われるとお伝えしました。今夜は、ラディーフが伝承された経緯と、その成立に関する説についてお話しすることにしましょう。


現在、イラン伝統音楽の器楽演奏において、最も重要な指標となるラディーフは、ミールザー・アブドッラーが伝承したラディーフといわれています。ミールザー・アブドッラーは19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した宮廷音楽家で、19世紀前半から中ごろの歴史的な宮廷音楽家、アリー・アクバル・ファラーハーニーの息子です。彼はおよそ250のグーシェを各ダストガーに渡り伝承しました。ミールザー・アブドッラーのラディーフといえば、現在イランの器楽演奏において最も重要な規範であり、現在のイランの伝統音楽の教育においても、器楽演奏者はミールザー・アブドッラーのラディーフを記憶することが前提となります。
このミールザー・アブドッラーが伝承したラディーフは、20世紀のタール奏者のヌールアリー・ボルーマンドにより録音されたものとなっています。ボルーマンドはミールザー・アブドッラーの直弟子ではありませんが、ミールザー・アブドッラーの直弟子のエスマーイール・ガフレマーニーという人物から12年間かけてミールザー・アブドッラーのラディーフを学びました。このボルーマンドによって伝えられたラディーフが、現在、ミールザー・アブドッラーのラディーフとされています。
ラディーフ自体に関していえば、そのほかの音楽の巨匠も、自身のラディーフを伝承し、それを自分の流派の規範としています。また、歌手を目指す人は、ミールザー・アブドッラーのラディーフではなく、20世紀の音楽家マフムード・キャリーミーが伝承したラディーフを学習します。この歌手用というべきラディーフは、ペルシャ語詩の一節が各体系ごとのメロディに乗せられています。
例として、マフムード・キャリーミーのラディーフの一説を紹介することにしましょう。ホマーユーンという旋法で、「レイリーオマジュヌーン」というグーシェです。この名前は、12世紀のペルシャ語詩人ニザーミーの作品『ライラとマジュヌーン』を意味しますが、キャリーミーのラディーフでは、ペルシャ語詩人サアディの「その瞳を見ないよう、心が乱れてしまうから」と続いている抒情詩の一節を歌っています。
ミールザー・アブドッラーが伝承したラディーフのメロディは、彼の生きていた時代よりも前に存在していたと思われます。フランスの音楽研究家、ジャン・デュリン教授によりますと、イランの音楽体系は、17世紀から18世紀ごろから、地域一帯に存在していた音楽体系とは違いを見せるようになったということです。このころから、現在伝えられているラディーフの原型といえるべきメロディが作られたり、アレンジされたといえるでしょう。なお16世紀までは、エジプトからイスラム世界の東部までには、まとまった一つの音楽的体系が存在していました。
また、イランの研究者ジョネイディー博士によりますと、イスラム時代以降、それまでサーサーン朝にあった音楽的中心地がバグダッドに移った際、そこで活動していた音楽家のほとんどはイランに住んでいた人々だったということです。また、中世の時代は、ファーラービー、イブン・スィーナーなど、イラン出身の学者によって音楽研究が行われていました。つまり、歴史的に、中東一帯の音楽は、イラン人が大変に大きな役割を担っていたのです。
ここでイラン現代の優れた音楽研究者、モハンマドレザー・ダルウィーシー博士が15世紀ごろのイランの王朝ティムール朝時代の音楽を再現した作品をお届けしたいと思います。時間の都合上比較してご紹介できませんが、オスマン帝国に伝わる曲と非常に似通っています。
現在、イランの音楽体系は、トルコやアラブ諸国に昔から伝わる音楽体系とは異なっています。しかし、以前はまとまっていたと思われる名残が、体系の名前から伺えます。たとえば、アゼルバイジャンに伝わる音楽体系・ムガームには、イランのフレーズと共通の名前を持つフレーズが数多く存在します。また、セガーというダストガー、つまり旋法は、トルコやアゼルバイジャンには今も残っていますが、デュリン教授によれば、イランのセガーは改良版とされており、いずれにせよ若干異なっています。また、以前、イランでもネハーヴァンドやサバーという体系があったようですが、これも現在はイラン音楽には存在せず、アラブ古典音楽に残っています。
最後に、現在でもアラブ世界やトルコに伝わるネハーヴァンドによる曲のをお届けしてお別れすることにいたしましょう。このサンプルでは、弦楽器のウードが演奏に用いられています。

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