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2016/01/03(日曜) 23:06

ナッガーリー(9)

ナッガーリー(9)

今回もペルシャ語の民俗物語のジャンルの一つ、ナッガーリーについてお話してまいりましょう。

 

物語の語り手であるナッガールたちは、ガフヴェハーネと呼ばれる喫茶店や公共の場所で、人々のために英雄物語を語ります。ナッガールはそれぞれ、得意なジャンルを持っていて、シャーナーメの読み手であったり、恋愛物語の語り手であったりします。またナッガールは、観客を喜ばせるために、様々な要素を利用しますが、その最も重要なものは、語り手の声と表現法です。ナッガールたちは、優れた心理学者であり、観客の状態や様子に合わせてプログラムを演じます。彼らは、多くの観客を惹きつけようと努めます。ナッガールたちは、自分や観客の状態を知り尽くしており、声の調子によって、必要な場合には登場人物を誇張して表現したり、時にはしばらく黙ったりして、観客の注目を惹きつけることができます。

ナッガールは、頭や手の動き、特に手を叩いたり、足を踏みならしたり、また重要な場面では話を止め、観客を興奮や落胆の中にとどめたりすることに長けています。ナッガールは実際、舞台も多くの仲間も持たない優れた演技者です。彼の舞台は、プログラムを演じる台の上と、壁に吊るされた人物像であり、それらの多くは、イスラムの預言者一門や英雄たち、古代の皇帝たちです。ナッガールは時に、物語の途中で歌を歌います。ナッガーリーは簡単な仕事ではありません。物語を終わらせ、別の物語を始める必要はありません。時には幾つかの物語を組み合わせ、一つの物語として終わらせることもあります。

ここからは、イランに伝わる物語をご紹介しましょう。前回に引き続き、「恩知らずのファラーマルズ」です。

昔々のこと。3人の息子がいる商人が、年を取り、体が弱ってきたため、自分の商売を息子たちに譲り、残りの人生を神への礼拝に捧げることにしました。商人はそのために、3人の息子それぞれに100トマンずつを渡し、彼らを試すことにしました。長男は商売のための宝石や品を買う代わりに、娯楽のために金を使い果たしてしまいました。次男もまた、悪い仲間に巻き込まれ、100トマンを一晩で酒や博打に費やしてしまいました。しかし、三男は、金を借りたまま死んでしまった男を叩いている男たちに渡し、その死んだ男を救ってやりました。父親はこの三男の行いを褒め称え、さらに100トマンを渡して、彼を商売に適した品や宝石を買いに行かせました。三男もそれを実行しました。三男が商売に向いていると判断した父は、さらに100トマンを渡し、召使いを買ってくるよう言いました。三男は、ファラーマルズという名前の、仕事を探していた裸の男を連れ帰りました。そして彼に、旅の支度をするようにと言いました。

ファラーマルズもそれに従い、朝早く起きると、50頭のラバを用意し、それに荷物を載せ、主人のために朝食を用意しました。それから主人を起こしに行きました。主人は起き上がると、旅の支度が全て整っていることに気づきました。そこでファラーマルズに言いました。「よくやった。どうやらお前は賢い人間のようだ。与えられた仕事をきちんとやり遂げることができる」 それからすぐに朝食を食べ、父親に別れを告げに行きました。父は三男に忠告しました。「お前が行く道の途中で、貯水槽と隊商宿がある。隊商宿にも、その貯水槽にも部屋を取ってはならない。そこよりも上の場所に滞在するように」 三男は父親に、それを忘れずに守ると約束しました。それから別れを告げ、召使いのファラーマルズと一緒に旅に出ました。

彼らは歩み続け、隊商宿に着きました。召使いのファラーマルズは荷物を下ろしました。そこで三男は言いました。「私の父が、隊商宿には泊まってはいけないと言っていたのを忘れたのか?」 ファラーマルズは言いました。「心配いりません。何も起こることはないですよ」 三男もそれ以上、何も言いませんでした。ファラーマルズが夕食を用意し、ラバたちをつなぎ、2人で夕食を取りました。三男が眠ってしまうと、ファラーマルズは荷物の上に横になりました。それから少し経った頃、遠くから明るい光りが見えました。光りはゆっくりと近づいてきます。ファラーマルズは起き上がりました。するとラバたちの中に、びっこをひくラバが寝ています。そこでそのラバのひもをとき、その光りの方へと行かせました。

少し時間が経ちました。光りは非常に近くまで来て消えました。びっこを引いたラバが血だらけで戻ってきました。ファラーマルズは起き上がり、ラバの背をなでてやりながら、えさを与えました。そして再び眠りに着きました。

朝になりました。彼が起きて隊商宿の外に行くと、40人の死体が転がっていました。そこですぐに引き返し、主人を起こして朝食を食べました。主人は、昨夜、怪我をして帰ってきたラバの姿を見て、なぜそのラバの顔が血だらけなのかとファラーマルズに尋ねました。ファラーマルズは主人の手を取り、外に連れ出し、次のように述べたのです。「この死体が誰のものかわかりますか?」 主人は驚いて尋ねました。「どうしたというんだ? 彼らは一体誰なんだ?」 ファラーマルズは言いました。「彼らはあなたのお父様が恐れていた盗賊たちです」 主人は喜び、ファラーマルズを褒めました。それから荷物をまとめ、旅の支度をするよう言いました。彼らは出発し、貯水槽に着きました。ファラーマルズは荷物を解きました。主人は今度も、貯水槽を見るや否や、言いました。「夜はそこに泊まってはならない、という父の忠告を忘れたのか?」 ファラーマルズは言いました。「いえ、何も起こりません」

こうして、隊商宿のときと同じように、彼らは荷物を下ろし、ファラーマルズが夕食を作り、彼らが食事を終えると、主人は眠りました。ファラーマルズも荷物の上で横になりました。それからしばらくが経ちました。ファラーマルズは、そこにオオカミとキツネが貯水槽に近づいてくるのを見ました。そこでオオカミがキツネに尋ねました。「ここで何をしているのですか?」 キツネは答えました。「あなたはここで何をしているのですか?」 オオカミは言いました。「私は毎晩、ここに来て、ここで獲物を探しています。偶然、この近くに羊の群れがいますが、羊飼いが大きな犬を飼っていて、獲物を狙うのを許してくれません。今夜は本当におなかが空いているのです。町の周辺で、人間の首が壁に吊るされているのを見ました。彼らが一体何をしたのかと尋ねると、この町では王様の娘が気が狂ってしまい、病気を治せなかった医者は首をたたれ、塔の上に吊るされると聞きました」

ファラーマルズは、オオカミとキツネの言葉を聞き、朝になるまで待ちました。まず、主人のために朝食を用意し、それから金を持って、すぐに戻ってくると告げて出かけて行きました。ファラーマルズは羊の群れのところに行き、羊飼いに犬を売るかと尋ねました。羊飼いは言いました。「犬がいなければ、羊たちが襲われてしまいます」 ファラーマルズは言いました。「羊の値段はいくらですか?」 羊飼いは100トマンだと言いました。ファラーマルズは100トマンを羊飼いに与えて言いました。「これは羊たちの値段です。もし羊たちがオオカミに襲われたら、この金で弁償したことになります。もし教われなかったら、あなたは得をしたことになります」 羊飼いはこうして、喜んで犬をファラーマルズに与えました。ファラーマルズは犬を10歩、進めると、パンをやり、背中を撫でてやりました。それから石を用意し、犬が眠ってしまうとすぐに、犬の頭に石を振り下ろし、犬の脳みそを取り出してハンカチの中に包みました。そしてそれを大事にポケットに入れ、王様の娘が狂ってしまったという町に向かいました。

ファラーマルズは人々に尋ねました。「なぜあなたたちの町では人間の首が吊るされているのですか?」 彼らは言いました。「この町の王様の娘が、気が狂ってしまい、それを治すことができなかった者は首をたたれて、あの塔に吊るされてしまうのです」 ファラーマルズは宮殿に向かい自分は医者だと名乗り出ました。さて、この後はどうなるでしょうか? 物語の続きは、次回のこの番組でお送りします。

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