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2016/01/25(月曜) 18:14

ナッガーリー(11)

ナッガーリー(11)

前回の番組で、英雄物語のナッガールの典拠は3種類あり、そのうちの記述された典拠についてお話しました。もう一つのグループは、口承による言い伝えが記録されたものを読む人々です。空想力や具現力を再現する能力に長けた語り手、ナッガールたちは、こうした能力の助けにより、師のもとで表現力を学びながら、その技術を身につけます。昔、多くのナッガールたちは読み書きを知らず、その記述を専門家に読んでもらい、それを記憶して人々の前で語り聞かせていました。

 

この典拠は、ほとんどの場合、読み書きがあまり得意ではない書き手たちが、ナッガーリーの集まりの場で速記していったものです。この書き手たちがそれほど読み書きが得意でなかったこと、速記されたことが原因で、この典拠には多くの間違いが見られ、それが他の典拠でも繰り返されていました。それにも拘わらず、この典拠は高い値段で取り引きされていました。

物語の語り手であるナッガールたちは、独学であろうと、誰かのもとで学んだ人であろうと、この典拠を利用し、物語をそこから取り入れていました。そのため、この典拠は、伝統を生み出し、記述された物語や口承物語を同時に守ってきました。ナッガーリーの研究者たちは、この典拠を物語の柱と見なしています。しかしときに、ナッガールが時代や場所のニーズに合わせ、独自に物語に別の文を加えたり、あるいは省略したりすることもあります。語り手は、1時間で2ページ分の記述を語りますが、観客がその日だけしかこない人々であることが分かれば、物語の付随的な部分を省いて、細かく説明しながら語っていきます。ナッガールたちは、多くの聞き手を集める物語のみを語っているのです。

ここからは、前回の小人のお話の続きをお送りしましょう。

昔々のこと。1頭の牛しか財産を持たない貧しい男がいました。貧しい男は牛を殺し、その牛の胃袋の中のものを出そうとしました。しかし、その胃袋を穴だらけにしてしまいました。そこで、その胃袋に泉の水を一杯にためて持ってくるよう、妻に命じました。胃袋は穴だらけであるため、水を貯めることはできません。妻がその指示を果たせなかったとき、夫は妻を家から追い出しました。妻は雪と寒さに凍えながら、どこか温まる場所を探して歩きました。すると、美しくきれいな洞窟を見つけました。そこで、その洞窟に留まることにしました。

洞窟の主は、リーゼミーゼという名前の小人でした。小人はたくさんの家畜を飼っていました。毎日一頭の羊を殺し、それを鍋に入れて火にかけてから、自分は家畜の群れを放牧に連れ出し、夜になると家に戻ってきて、朝煮た羊の肉を食べました。小人は、妻がそこで母親代わりとなり、留まることを許可しました。ある日、妻は子供たちに会いたくなり、彼らに会いに行くことにしました。そこで、調理された肉を持ち、家に戻りました。さて、今夜はその続きです。

妻が家に着くと、扉は閉まっていました。そこで、屋根裏に回ってみると、夫と子供がぐったりしています。夫が殺した牛の肉は底を付き、家には食べ物がなにもありませんでした。子供たちはすっかり弱って、今にも餓死してしまいそうです。妻が見ていると、末の息子が言いました。「神よ、私に食べ物をください」 妻は屋根裏から肉を少し落としました。2番目の息子が肉に気づき、上を見上げて言いました。「神よ、私にも食べ物をください」 妻は再び、肉を落としてやりました。一番上の息子は、兄弟たちの願いが叶ったのを見て、言いました。「神よ、私にも食べ物をください」 妻は一番上の息子にも肉を落としてやりました。しかし、今度は夫がそれを望んだとき、妻は屋根裏にあったレンガを持ち上げ、夫に向かって投げつけました。夫は言いました。「私はこんなものは要らない。私にも、子供たちと同じような食べ物をください」 妻は子供たちに、扉を開けるよう言いました。子供たちは母親の声を聞いて喜び、すぐに扉を開けました。

妻は家の中に入り、夫に向かって言いました。「あなたは私を家から追い出し、牛の肉を一人で食べてしまったのですね。冬が過ぎ、牛の肉は使い切ってしまいましたが、私はまだ死んでいません」 夫は言いました。「今までどこで何をしていたんだ?」 妻は言いました。「暮らすための場所が見つかったので、そこで暮らしています。さあ、必要なものを持って、一緒に行きましょう」

妻は必要なものをまとめ、夫の背中に乗せ、自分は子供たちの手を引いて洞窟に向かいました。彼らはそこに、すばらしい場所があることを知りました。何でも欲しいものがそろっています。かまどには鍋が載っていて、肉が煮えています。彼らがようやく腰を下すと、夕方になりました。小人が家畜の群れを連れて帰ってきました。ラクダと羊とヤギと牛は、それぞれの小屋に帰って行きました。そして小人もヤギの角から降り、洞窟の中に入ってきて、そこで夫と子供たちに気づきました。

小人はすぐに近寄り、彼らに挨拶をしました。小人は非常に心優しく、女性の夫を自分の父親、子供たちを自分の兄弟のように愛し、毎日、子供たちを荒野へと連れて行きました。夫婦は家に留まり、家事をしていました。小人とその家族は、こうしてしばらく共に暮らしていましたが、ある日、小人は家畜の群れを連れて帰ると、夫に向かって言いました。「王様の娘に求婚をしてほしい」 夫は何も言いませんでした。自分のようなみすぼらしい人間が、王様の宮殿に行き、あんなに美しい娘を小人の嫁に欲しいなどと、言えるわけがありません。夫はきれいな服一枚も持っていないのです。しかし、小人の頼みですから、聞かないわけにはいきません。そこで、頭と腰に布を巻き、宮殿に向かいました。

夫は町に着くと、人々に宮殿の場所を尋ねて回りました。しかし、誰に聞いても、皆、彼をあざ笑うばかりでした。しかしそれを辛抱強く続け、こうしてとうとう、宮殿の前に着きました。宮殿の門番は、どんな用かと尋ねました。夫は、王様の娘に結婚を申し込みにきたと言いました。夫が宮殿の中に入ろうとしたとき、門番は彼の行く手を塞ぎましたが、そのとき王様がやって来て、通すようにと言いました。王様は、この男がきっと物乞いに来たに違いないと思ったのです。宮殿の中に入っても、夫は誰にも声をかけてもらえませんでしたが、王様は横に座るように言いました。宮殿にいた人たちは皆、嫉妬しました。しかし、そこに現れた物乞いのようなみすぼらしい男が、王様の娘のために結婚を申し込みにきたと聞き、このみすぼらしい男を馬鹿にして、皆を笑わせようと思い立ちました。

王様はこの申し出に条件を与えました。自分の家の前から宮殿の前まで、金銀財宝を乗せた膝の黒いラクダを並べるようにというのです。男はそれを受け入れ、宮殿を出て洞窟に帰り、小人に王様の条件を話しました。小人は喜び、「そんなことはたいしたことではない」と言いました。それから、膝の黒いラクダを用意し、金と銀を袋に入れてラクダの背中に結びました。そして、先頭のラクダの手綱を男に渡し、自分もヤギの角の上に座って、ラクダたちについて出発しました。

先頭のラクダが宮殿の前についた頃、一番後ろのラクダは、まだ洞窟の前から動いていませんでした。宮殿の役人から知らせを受けたとき、王様はただただ、驚いていました。そして、みすぼらしい男を宮殿に招かざるを得ませんでした。人々は、金銀財宝やラクダの姿を見て、あっけにとられていました。この男は、こんなにみすぼらしい格好をしているのに、これほどの財産をどこから持ってきたのでしょうか。

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