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2012/11/12(月曜) 18:02

「口のうまい男」

「口のうまい男」

13世紀のペルシャ詩人、サアディの代表作、ブースターン・果樹園から、「口のうまい男」のお話です。

昔々のこと。あるところに、誰にも情けをかけることのない、非常にけちな男が暮らしていました。彼はいつも金を蓄えてはなるべく使わないようにし、他人を助けることもありませんでした。そんな男にも、たった一つだけ、よいところがありました。でも、その性質を悪用し、誤った使い方をしていました。このけちな男のよいところとは、口がうまいことでした。彼の話にかかれば、巣の奥にいる蛇も出てきてしまうほどでした。

彼の口のうまさに、誰もが最初は騙されていましたが、このけちな男は、それをあまりに長く続けたため、とうとう皆に知られるところとなり、もう彼の口のうまさに騙される者はいなくなり、効き目を失ってしまいました。ある日のこと、けちな男が、今度は誰を騙し、金を手に入れようかと考えていると、ふと、その町に住む、評判のよい男のことを思い出しました。彼は善行に励み、寛容なことで知られており、昼も夜も、人々を助けていました。けちな男は、この寛容な男の許に行き、彼を騙すことにしました。そこで、寛容な男を見るなり、美辞麗句を並べて話しかけました。けちな男は、この寛容な男に言いました。「私は卑しい男から10ディルハムを借りています。そのせいで、本当に苦しい目に合わされています。毎日、私の家に来ては、金を返せと大声を上げるのです」

寛容な男は、この男の言葉を聞いたあと、少し考えてから言いました。「分かりました。私が助けてあげましょう」 こうしてけちな男は、金貨を受け取り、大喜びで寛容な男の家を辞去しました。彼の表情は、あまりのうれしさに光り輝いていました。そのとき、寛容な男の近所の人が、けちな男を見かけました。その近所の人は、けちな男のことを知っていました。それで、何が起こっているかを知ると、すぐさま寛容な男の家を訪れ、彼にこう言いました。「あなたは、あの口のうまい男のことを知らないのか。彼に金を渡したとは、まさか彼がどういう男か知らないのか? 彼が死んでも涙を流してはいけないほどだ。ましてや、金をあげるなんてもってのほかだ。なぜ彼のことを知らないのだ? 彼は現代で最も卑しい男であり、この町では、彼に騙され、痛い目に会わなかった者はいない。なぜ彼の言葉を信じてしまったんだ? 彼の言葉は全て嘘だ。それが彼という人間だ」

寛容な男は、その言葉に不愉快になり、近所の人に反論しました。近所の人は驚いて言いました。「何を言うのだ? まさか、彼の言うことを信じたんじゃないだろうな?」 寛容な男はいつものように少し考えてから言いました。「もし私が考えたことが正しく、彼が金を借りているのなら、実際、私は、彼の名誉を守ったことになる」 近所の男は不快そうに言いました。「彼は嘘つきだ。誰もがそれを知っている。それなのに、もし彼の言うことが本当だったら、彼の名誉を守ったことになるなどと言うのか?あんな男は面子も何も分かりやしない」 寛容な男は言いました。「そう、もしかしたら、あなたの言うことは正しいかもしれない。でも私は、彼が間違いなく嘘を言っているとは確信できない。もし彼が本当のことを言っていたら、私は彼の名誉を守ったことになる。もし嘘をついていて、別の思惑があったとしても、私は不愉快になったりはしない。なぜなら、実際、自分の名誉を守ったことになるからだ」

近所の男はそこで考え込んでしまい、寛容な男の言葉に対して、言い返すべき言葉もありませんでした。寛容な男は言いました。「そう、もし彼が嘘を言っていたとしたら、私はたわごとを言う策略家の手から、自分の名誉を守ったことになる」

ここからはことわざにまつわる物語をご紹介しましょう。「いつか貧しくなるのが怖くて、一生乞食のように暮らす」

地上に生きる昆虫や爬虫類、草食動物、そして鳥類の中に、神の全ての創造物とは異なる鳥がいました。普通の生き物は、朝、眠りから覚めると、その日のえさを探しに行き、木の実を見つけて食べたり、獲物を取ったり、草を食んで腹を満たしていました。

しかし、別の生物とは異なる種類のこの鳥は、種も、草も、肉も食べず、ただ水を飲むだけでした。そのような生き物は、何の苦労もないはずでした。なぜなら、地球上のほとんどは水で覆われており、鳥の腹を満たすだけの水は、簡単に見つかります。ここに水がなくても、あちらにはあります。また、鳥ですから、羽を広げて飛び立てば、どこでも水がある場所に移り住むことができます。しかし、この鳥は、別の鳥とは異なっていました。いつも、水が水蒸気になり、水を失ってしまうことを恐れていたのです。この鳥はいつも、海や川のそばで暮らし、簡単に水が手に入るように気をつけていました。しかし、いつものどの渇きに苦しんでいました。この鳥は、水を飲むことによって、世界の水が尽きてしまい、のどの渇きによって死んでしまうのを恐れていたのです。別の鳥たちに、そんなに水が尽きるのを恐れてのどの渇きに耐えるべきではない、と忠告されても、聞く耳を持ちませんでした。水が手に入っても、一口、口にするだけでした。なぜなら、腹いっぱいに水を飲んでしまって、湖の水がなくなってしまうのが怖かったからです。

何年もの間、水を飲んで生きる特別な種類の鳥たちは、必要な分の水を飲んでいなかったため、日々、弱り、その数もしだいに減っていきました。いつも水がなくなることを恐れていた鳥は、年々仲間の数が減っていくのを見て、何とかしなければと思いました。しかし、好きなだけ水を飲み、生き残るよう言う代わりに、仲間たちにこう言いました。「これからも、水をたくさん飲んではいけない。水がなくなることを心配するあまりに、仲間たちが死んでしまっているに違いない。もし、もっと飲む水の量を少なくすれば、きっと不安も減るに違いない」

すると、一羽の鳥が言いました。「全ての生き物も、水を飲む量を減らしていたらよかったのに。彼らは僕たちのように考えたりはしない。彼らが好きなだけ水を飲み、いつか、世界中の水が尽きて、僕たちがのどの渇きに死んでしまうことにならないか心配だ」

すると、いつも恐れてばかりの鳥が言いました。「本当だ。明日から、全ての生き物に、私たちのように気をつけて、水を飲む量を減らすように呼びかけて回ろう」

そのとき、木の枝に止まり、彼らの話を聞いていたカラスが言いました。「あなたたちは、いつか水不足に悩まされないよう、水をあまり飲まないようにしている。それが、あなたたちの仲間たちが死んでしまっている原因だ。あなたたちがしていることは、いつの日か財産を失うのが怖くて、一生こじきのように暮らす人間と同じだ」

鳥たちは、賢いカラスの言葉に耳を傾けませんでした。そのため、彼らは絶滅し、水だけを飲んで生きる鳥は、いなくなってしまったのです。

このときから、金持ちなのに、貧しくなるのが怖くて、乞食のように人に助けを求め、自分の財産を貯めこむ人のことを、こんな風に言うようになりました。「いつか貧しくなるのが怖くて、一生乞食のように暮らす」

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