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2012/12/20(木曜) 20:45

仕立て屋と若者

仕立て屋と若者

昔々のこと。一人の仕立て屋が暮らしていました。この仕立て屋は、人々が服を縫ってほしいと持ってくる布の一部を、いつもこっそりと盗んでいました。人々も、この仕立て屋が、布の一部を盗んでいるのを知っていましたが、誰もそれを証明することができませんでした。なぜなら彼はいつも客の前で、寸法を測り、布を裁つ際にそれを行っていたからです。ずるがしこいやり方で布の一部を盗んでいたため、誰も彼がいつ、どうやって盗んでいるかを悟ることができませんでした。

彼に布を預けていた人々の多くが、この仕立て屋の店に行く前に、知り合いや友人たちに、今度こそは盗みを働けないようにしてやる、と約束して向かって行きましたが、いつも騙されて帰ってきました。仕立て屋は、自分のこの行為を、ある種、芸術的で見事なものだと誇っていました。そしてそれを誇示するように、布を盗んで服を縫った後、その盗んだ布を客の前に見せびらかし、どれだけ芸術的なやり方で布を盗んだかを知らせていたのです。

仕立て屋は、客の持ってきた布を盗むために、様々な方法を用いていました。彼はそれぞれの客を違ったやり方で騙し、彼らの注意を逸らすことで、その機会を利用し、事を行っていました。そうしたある日のこと。非常に賢い、トルコ人の金持ちの若者が、仕立て屋に決して盗みを働かせないと友人たちに約束しました。この若者と友人たちが喫茶店に集まり、このことについて話していた時、一人が若者に言いました。「じゃあ、かけをしようじゃないか?」

金持ちの若者は、アラブのサラブレッドを一頭、持っていました。敏捷さと機敏さにかけて、この馬の右に出るものはいないほどでした。金持ちの若者は言いました。「僕のこの馬をかけよう、参加したい者は、前に出るんだ。もし仕立て屋が僕の布を盗むことができたら、馬をその人にあげる。でももし盗むことができなかったら、僕の馬と同じような馬を、僕にくれる、というのはどうだろう」。そこへ、一人の貧しい若者が名乗り出ました。「僕は参加する。でも金も持っていないし、君が持っているような馬も持っていない。もし君が勝ったら、僕は君が良いと言うまで、君のために働こうじゃないか」

トルコ人の若者はこの条件を受け入れました。翌日の朝、このトルコ人の金持ちの若者は、服を縫ってもらうため、例の仕立て屋のもとに行きました。昨日の若者の話を聞き知っていた仕立て屋は、彼を見た時、心の中でこうつぶやきました。「この騙されやすい未熟な若者め。今から、もう馬は失ったと考えることだ。何が起こったか分からないほど、大きな痛い目にあわせてやる」。仕立て屋は若者を温かく歓迎しました。若者は仕立て屋に心を集中させ、しゅす織りの布を彼の前に広げ、言いました。「仕立て屋さん、この布で、戦いの日のための、前開きの長いシャツを縫ってくれないか」。そして、縫ってほしい服の特徴を彼に教えました。

一方の仕立て屋は、若者が面白おかしい話がすきなのを思い出していました。布をくるくると回し、寸法を取り、裁っていきながら、面白おかしい物語りを話し始めました。仕立て屋はこの話を始める前に、若者に言いました。「あなたが退屈しないように、作業をしながら、これまでここにやってきた客の話をして差し上げましょう。きっと気に入ると思いますよ」。仕立て屋は言葉を巧みに操りながら、最初の物語りを始めました。金持ちの若者は、仕立て屋の話にすっかり引き込 まれ、腹を抱えて笑いました。若者の小さくて細い目は、笑うともっと小さく、細くなりました。若者はあまりに笑いすぎて、その小さな細い目がとうとう閉じてしまいました。仕立て屋はその機会を逃さず、この隙に布の一部を切り取って隠してしまいました。

金持ちの男は、仕立て屋の話にすっかり満足し、別の話をしてくれないかと頼みました。仕立て屋は最初、少しもったいぶっていましたが、その後、若者の要求を聞き入れ、二つ目の面白おかしい物語りを話し始めました。それを聞いた若者は、笑いすぎてひっくり返ってしまいました。彼はすっかり笑い転げ、仕立て屋が彼の布を少しずつ盗んでいくのに全く気づきませんでした。仕立て屋はこの2つの物語りによって、若者の貴重な布をたくさん盗むことができました。金持ちの若者は、さらに3つ目の物語りを仕立て屋に要求しました。しかし若者は、面白おかしい話が語られるたびに、自分がどれほどの代価を支払っているか、全く気づいていなかったのです。

仕立て屋は、残りの布を一瞥し、それから若者を見て、ひとりごちました。「この哀れな若者は、私がどれだけ布を盗んだか気づいていない。でも、これ以上彼に物語りを聞かせたりしたら、神が許してくださらないだろう」。仕立て屋は、若者からもっと話をしてくれとせがまれましたが、それを断りました。自分が物語りの代価を受け取っていると、若者に分からせることもできませんでした。そのため、若者の方に向き直り、言いました。「若者よ、これ以上はもう語らない。疲れたからね。もう語るべきことは残っていないよ」

しかし若者は、それでも頼み込んできました。仕立て屋はあまりに執拗に頼まれたため、もっとはっきりと若者に説明しなければならなくなりました。そこで、若者に向かって言いました。「もういいだろう、愚かな若者よ!これ以上、面白おかしい話を聞きたかったら、あなたの服は本当にきつくなってしまうんだ。その意味が分かるだろう?」

金持ちの若者は、突如、深い眠りから覚めたようになり、黙ってしまいましたが、少したつと突然、大声で笑い始めました。仕立て屋はその笑いの理由を尋ねました。すると若者は言いました。「今度はあなたの物語りで笑っているんじゃないよ。自分自身に笑っているんだ。最初からもう、かけに負けていたなんて。あの最初の話で、もう僕は馬を失っていた。そしてそのことに、全く気づいていなかったんだ」

今回の物語りはいかがでしたか?では、今回のことわざです。「ラクダに蹄鉄を打ちたかったのに、カエルが足を上げた」

昔々のある日のこと。大勢の人々がある場所に集まっていました。誰でもそこを通る人が、何事かと寄って来たため、群集はどんどん膨れ上がっていきました。どうやら、ラクダ追いが、自分のラクダに蹄鉄を打とうとしているようでした。ラクダ追いは言いました。「このラクダで人々のために荷物を運び、それで稼いだ金で生活する。歩きすぎてラクダが足を痛めないように、ラクダの足に蹄鉄を打つことに決めた。そうすれば何も心配することはない」

すると一人が言いました。「ラクダは馬やロバとは違うんだ。ラクダの足に蹄鉄を打つなんて」別の一人も言いました。「今までラクダの足に蹄鉄を打つなんて、聞いたことがない」

また別の一人が言いました。「そんなことはない!ラクダにだって、馬やロバと同じようにひづめがある。蹄鉄がなければ、足を痛めるよ」

それに対し、一人が言いました。「ラクダのひづめは柔らかいんだ。馬やロバのひづめとは違うよ。痛くない頭に包帯を巻くようなものだ。ラクダは蹄鉄なんてなくても荷物を運ぶんだから、そんなものつける必要はない」

こうして誰もが口々に言いたいことを言いました。しかし問題は、ラクダが足に釘を打たれ、蹄鉄をはめられるのを嫌がっていることでした。そのため、ラクダは大きな体で地面に踏みとどまり、誰にも足を持ち上げて釘を打つことなどできないよう、ふんばっていました。ラクダやラクダ追いの周りに集まっていた人々が口々に何かを言っている間も、ラクダの抵抗は続いていました。そこへ、辺りに住んでいたカエルが、人々の騒ぎを聞いて顔を出し、人々の足の間を縫って、ラクダのところにたどり着きました。しばらく待って、何が起こっているのか知るために、人々の話に耳を傾けていました。そして突然、ぴょんと飛び跳ねると、ラクダのこぶの上にちょこんと乗りました。

人々はカエルを見て、一瞬驚いた後、笑い出しました。少したってから、カエルが言いました。「気の毒に、このラクダは蹄鉄をはめるのは痛いものだと思い込んでいる。それで足を地面から離そうとしないんだ。それなら僕が足を上げようじゃないか。試しに僕の足に蹄鉄をはめたらいい。そうしたらラクダも、それが痛いものじゃないと分かるだろう」

それを聞いた人々は、カエルのおろかさに笑い転げました。自分が笑いものにされたことを知ったラクダも、体を動かしてカエルをこぶの上から落としました。そして、周りに集まっていた人間たちの笑いものになるのはたくさんだと思い、跳ね上がってそこから遠ざかっていきました。このときから、知識や経験のある人が拒んでいるのに、無知な人間が、その大変さを知らずに簡単に引き受けてしまうことを、このように言うようになりました。「ラクダに蹄鉄を打ちたかったのに、カエルが足を上げた」

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