このサイトは更新されていません。新サイトはこちらです。 Parstoday Japanese
2013/01/03(木曜) 19:57

「ラクダを見たか?見なかった」

「ラクダを見たか?見なかった」

昔々のある日のこと。当時、甘い言葉を巧みに操るイランの詩人、サアディは、いつも町から町へと旅を続けていました。あるとき、歩いて旅をしていたときのことです。ラクダの足跡を見つけました。そこで、彼よりも先に、ラクダがそこを通ったことを悟ったのです。もう少し進むと、道の傍らにシロツメクサの広がる野原が見えました。その野原の左側の一部が食べつくされ、右側は全く手がつけられていませんでした。そこでサアディは考えました。「野原の左側を食べたということは、ここを通ったラクダは、右目が見えなかったに違いない」

サアディはさらに歩みを進めると、ラクダの足跡の近くにあった何かがこぼれたシミの跡があり、その上に数匹のハエが止まっているのを見かけました。サアディはかがみこみ、そのシミを調べてみました。そのシミは、どうやら果実か何かの液体のようでした。サアディは微笑を口元にたたえて言いました。「かわいそうに、ラクダは液体の入った入れ物を載せていて、それにも穴が開いていたんだ」

サアディがさらに足跡を追って進んでいくと、今度はラクダの足跡の横に、もう少し深い穴があって、その横に、さらに女性の靴の跡があるのを見つけました。サアディは考えました。「これらの跡から分かるのは、ラクダがここで地面に座ったということだ。ラクダには女が乗っていた。そしてここで、ラクダの背から降りたんだ」

サアディはなおもラクダの足跡を辿っていきました。ラクダの足跡はまだまだ続いています。そこで考えました。「ラクダに乗った女は、少し休んで、それからまたラクダの背に乗って進んでいったんだ。もう少し急いだら、ラクダに追いつくかもしれない。そしたら、この予想が当たっているかどうか確かめることができるのに」。こうしてサアディはなおも進み続けました。すると道の途中で、一人の男に出会いました。その男は、怖がっておろおろと当てもなくさまよっていました。サアディは男に尋ねました。「どうしたんですか?そんなにおろおろとして、何があったんですか?」 男は答えました。「ラクダが逃げてしまったのです。あなた、ラクダがここを通るのを見かけませんでしたか?」 サアディは尋ねました。「ラクダは右目が見えませんでしたか?」 男は答えました。「ええ、右目が見えませんでした」。サアディはさらに尋ねました。「そのラクダは、液体の入った入れ物を載せていましたか?」 男は答えました。「ええ、載せていました」。そこでサアディは答えました。「私はあなたのラクダを見かけていません」

それを聞いた男は尋ねました。「見かけていないですって?! もし私のラクダを見かけていないというのなら、なぜラクダの特徴を知っているのですか? あなたがラクダを盗んで、どこかに隠しているに違いない!」 サアディは言いました。「なんてことを言うんだ? あなたのラクダはネズミではない。こんな砂漠に隠すことなどできるわけがないだろう! 私はラクダの足跡やら、残していった痕跡から、ラクダがどうやってここを通っていったかを悟ったんだ」

それを聞いた男は、持っていた木の棒でサアディに殴りかかりました。サアディは殴られながらも、自分は無罪だと訴え続けました。すると突然、男のラクダが遠くに姿を現しました。男は殴るのをやめ、ラクダを追って走り出しました。サアディは、自分が賢かったために問題に巻き込まれてしまったことを悔やみ、ラクダを見たかと問われたら、最初から、余計なことを言わずに、自分には関係ない、ラクダなど見なかったと、つっぱねてしまえばよかったと思いました。このときから、自分が知っていることの全てを口に出して言わないほうがよい、ということを例えるとき、このことわざが使われるようになりました。

「ラクダを見たか?見なかった」

このカテゴリをもっと見る « 仕立て屋と若者 ハトたちと判断 »

Add comment


Security code
Refresh