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2013/07/10(水曜) 20:06

猟師

猟師

あるところに、一人の猟師がいました。この猟師は、弓と矢をかついで茂みを歩いていました。疲れ果て、顔には汗が吹き出ていました。猟師は立ち止まり、弓と矢を地面において顔の汗をぬぐいました。周りを見回しましたが、獲物は見当たらず、空には一羽の鳥もいません。猟師は不平をもらしました。「今日はついていない。動物たちは皆、一体どこへ行ったのだ?」。猟師は仕方なく、戻ることにしました。そのときです。突然、草むらの向こうから足音が聞こえました。

 

猟師は静香に弓と矢を取り上げ、あたりに隠れました。そして注意深く耳を傾けました。再び、草むらの向こうから、足音が聞こえました。少し経つと、背の高い草の向こう側から、美しいカモシカが飛び出してきました。カモシカは自分の世界に浸っており、周りのことは一切気にしておらず、優雅に気取った様子で歩いていました。猟師の口元に笑みが浮かびました。「何てすばらしい獲物だ!決して逃がすものか」。猟師はゆっくりと弓にやをつがえました。少しでも音を立てれば、獲物は逃げてしまいます。彼は弓を引き、狙いを定めて力いっぱい矢を放ちました。

矢はカモシカの心臓命中しました。哀れなカモシカは、身動き一つせずに地面に倒れました。猟師はカモシカのところに行き、体から矢を抜き取りました。それからカモシカの死体をかつぎ、鼻歌を歌いながら、家に向かいました。家までは少し距離がありましたが、いい獲物を手に入れることができたため、疲れは感じませんでした。猟師が家に向かっていると、どこからともなくカサカサという音が聞こえました。立ち止まって周囲を見回し、考えました。「もしかしたら、またカモシカがいるのかもしれない。音を立てないようにしよう」

猟師は最初、もう今日は獲物をとる必要はないと考えました。しかしすぐに考えを変えました。「こちらの一頭は、売って、その金で必要なものを買おう」。猟師は獲物をゆっくりと地面におくと、弓と矢を用意しました。もう一度、物音が聞こえました。猟師は矢をカモシカの心臓に向かって放つ用意をしました。するとそのときです。突然、大きないのししが、彼に向かって突進して来るではありませんか。急いで矢をいのししに向けました。矢はいのししの首に刺さりました。しかし、いのししは倒れませんでした。体から血を流しながら、それでも突進してきます。それに、先ほどよりずっと獰猛で危険になっています。猟師はもう一本、矢をつがえました。今度はひょっとしたら、いのししを地面に倒すことができるかもしれないと思ったのです。

しかし、すでにいのししは彼のすぐ近くまでやって来ていました。猟師は突然、いのししの重さを体に感じました。しばらく格闘した後、猟師も人間も傷だらけになって地面に倒れました。大量の血が流れ、二人とも気を失う寸前でした。こうして数時間後には、カモシカの死体の傍らで、どちらも息絶えてしまいました。弓と矢は、まだ猟師の手の中にあり、いつでも放てるようになったままでした。それは非常に悲しい光景でした。数時間前までは生きていて息をしていたのに、今では、3つの死体が並んでいるのです。そのとき、腹をすかせた狼が近くを通りかかりました。肉と血の匂いを感じ、匂いのする方に行って見ると、そこに3つの死体があるのを目にしました。

狼には信じられない光景でした。3つの上等のえさが並んで倒れているのです。狼はこれほどの食べ物を目にして喜びに心を躍らせました。何の苦労もすることなく、これほどの食べ物が手に入ったのです。大きな笑い声を立て、言いました。「腹をすかせた不幸な狼よ、お前が報われる日がついにきたのだ。好きなだけ食べるがよい」。そのとき、ある考えが浮かびました。「そうだ、今日は3つのうちの一つだけを食べることにして、あとの二つは隠しておこう。そうすれば、あと数日は、獲物を探さなくて済む。あとは誰かに食べられないよう、獲物を隠す場所を探さなければならない。まず、今日の昼の分を食べ、それから残りを隠すことにしよう。

狼は、死んでしまった猟師のもとに行き、それを食べようとしました。ところがまだ一口も口にしないうちに、狼の鼻面が、猟師の手にあった弓と矢にあたりました。そして、矢が弓から放たれ、狼に命中したのです。狼には何も見えず、何が起こったのかも全くわかりませんでした。ふらふらと数歩進んでいくと、3つの死体から少しはなれたところで地面に倒れてしまいました。狼は、3つのえさを腹いっぱいに食べるという望みをかなえぬまま、死んでしまいました。

それでは今回のことわざです。

「狼の布団職人だった」

昔々、まだ既製品の敷き布団や掛け布団がなかったころのお話です。人々は布や羊毛を買ってきて、職人に渡し、それで敷き布団や掛け布団を縫ってもらっていました。イランでは、布団職人をハッラージュと呼んでいました。ハッラージュは、皮ひもの付いた棒で羊毛をたたき、やわらかくして毛の塊をほぐし、それを布の袋に入れ、縫いあげていきました。ある日のこと。ハッラージュは、布団を縫うために別の村に行くことになりました。彼は家族に別れを告げ、道具を持って、出発しました。

すでに冬を迎えて寒さが厳しくなっており、地面は雪に覆われていました。ハッラージュはロバも馬も持っていなかったため、歩いて出発しました。彼はすでに、自分の村からは遠く離れたところに来ていました。突然、腹を空かせた狼が、彼に近づいてくるのが見えました。身を守る術を持たなかったハッラージュは、木によじのぼり、それによって狼から逃れようと思いました。回りを探してみましたが、運の悪いことに、見渡す限り、雪ばかりで、はるか彼方まで、枯れ木一本、見つかりません。ハッラージュは、もう終わりだと思いました。「木の棒か何かを持っていたらよかったのに。そうしたらそれで狼と闘っていたんだが」。そう思ったとき、ふと、布団作りの棒を思い出しました。最初はそれで狼と闘おうと思いましたが、それを両手でかわりばんこに握っているうちに、役に立たないことを悟りました。それに、仕事に使う大事な道具を、狼との取っ組み合いで失いたくはありませんでした。

ハッラージュは、布団を縫うときに使う皮ひもの付いた棒を使って狼と闘うという考えを忘れようとしましたが、狼は、あと数歩のところまで近づいています。ふと気が付くと彼は、棒を上に持ち上げ、狼の頭に振り下ろそうとしていました。そのとき手が棒についている皮ひもにひっかかり、大きな音がしました。突然のこの音にびっくりした狼が数歩後ずさりしたのを見て、ハッラージュは、狼が皮ひもの音を怖がっているのに気づきました。そこで、すぐに地面に座ると、その音を何も鳴らしました。狼は恐れおののき、さらに後ずさりしました。そこでハッラージュは音を出すのをやめました。

しかし、腹を空かせていた狼は、音がやむと、再びハッラージュに襲い掛かろうとしました。ハッラージュは再び、棒についている皮ひもを鳴らしました。この戦いは、数時間続きました。ハッラージュが疲れ果て、皮ひもを鳴らすのを止めると、狼が彼に近づき、またハッラージュが皮ひもの音を鳴らすと、狼は恐れて逃げていきました。ハッラージュは、これ以外になす術がなかったので、音を鳴らし続けました。ついに狼は疲れ果て、諦めて去っていきました。

ハッラージュは、命が助かったことを神に感謝し、家に帰りました。夫が手にいっぱい荷物を持って帰ってくると思っていた妻は、ハッラージュに向かって言いました。「おかえりなさい。お仕事はどうでした?誰かのために布団を作ったんですか?」。ハッラージュは言いました。「作ったよ。何時間も、布団縫いに使う棒を使ってね。でも、報酬はもらえなかった。何も持たずに帰ってきたよ」。妻は尋ねました。「どうしてですか?報酬をくれないなんて、誰のために仕事をしたんですか?」

ハッラージュは言いました。「狼のために道具を使ったんだ。敷き布団も掛け布団も作らなかった」

こうして、自分が経験したことを妻に話して聞かせ、命が助かったことを再び神に感謝しました。このときから、辛抱強く努力しながら、何の成果も報酬も得られない人のことを、こういうようになりました。「狼の布団職人だった」

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