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2013/08/20(火曜) 23:16

為政者と二人の息子

為政者と二人の息子

昔々のこと。あるところに高齢のため、老いて無力になった為政者がいました。この年老いた為政者には2人の息子がいましたが、どちらも勇敢で剣術に長けており、また優れた知識を持っていました。年老いた為政者は、自分の死後、息子たちが、統治を握るために、互いに争いを始めることを知っていました。そのため、死ぬ前に彼らの未来を明らかにしておくことにしました。こうして、領土を2つに分け、それぞれの領土の統治を2人の息子に委ねることにしたのです。こうして数日、数週間、数ヶ月が過ぎ、とうとうその日がやってきてしまいました。年老いた為政者がこの世を去ったのです。

 

為政者の死により、息子たちの統治が始まりました。彼らは互いに干渉することなく、自分の領土の統治に励みました。彼らはあまりに自分の統治に忙殺されていたため、互いのことをすっかり忘れてしまいました。為政者は、死を迎える前、息子たちに次のような助言を与えていました。それは、もし統治に成功したければ、哀れな国民を忘れてはならない、どんな状況でも、正義と公正を守ることだ、というものでした。息子の一人は、父親の遺言を実行し、国民への奉仕に努めました。しかし、もう一人の息子は、好き勝手に統治を進め、統治において、哀れな国民への配慮を完全に忘れる、という有様でした。

一人は正義と公正を追求し、何を行うにも、まず、その善悪について考えていました。しかしもう一人は、圧制的なやり方を追求し、それによって、自らを暗黒の穴に陥れてしまいました。公正な為政者は、国庫の金銀財宝を、国民の状況を改善するために費やし、恵まれない人や困窮にあえぐ人を救おうと努めました。一方、圧制的な為政者は、国庫の金銀財宝を増やすために、哀れな国民に重い税を課しました。こうして時が経ち、公正な為政者が治めていた領土では、国庫の財産は尽き果ててしまいましたが、国民は安らぎを手に入れました。為政者は、貧しく恵まれない人々のために、家や住む場所を建てました。彼の正義により、全ての人々の生活は改善され、いたるところに、幸福や喜びが満ちていました。人々は若いながらも公正な為政者を見て、彼に共感し、苦境に際しては、彼に寄り添い、支援しました。しかし、圧制的な為政者は、日々、自らの富や財産を増やしていき、自分の領土の幸福は、国庫がいつも、金や宝石で埋め尽くされていることだと語っていました。彼は、兵士たちに支払う賃金を大幅に減らしたため、しだいに兵士たちの心から、若い為政者への敬愛の情が消えうせ、敵意すら芽生えていきました。

近隣諸国の商人たちは、その国で圧制的な統治が行われていると聞き、その国の商人たちとの関係を断ちました。取引は停止され、市場は停滞に陥りました。こうしてその国家は弱まり、この状況を知った敵から攻撃を仕掛けられました。このような状況に陥っても、統治の当初から、圧制的な為政者は人々のことを全く気にかけてこなかったため、人々の助けを期待することはできませんでした。彼はひどい圧制を行ってきたため、国民から死を望まれるほどでした。こうして誰にも助けてもらえず、とうとう敗北を喫してしまいました。一方、公正な為政者は、常に国民のことを考えていたため、困難な状況に陥っても、国民が味方になってくれました。

こうして、この2人の為政者も年を取り、とうとうこの世を去りました。しかし、公正な為政者は、自らの善を全て、よき行いとしてあの世に持って行き、その名を後世に残しました。しかし圧制的な為政者は、抑圧と圧迫を自らの冥土の土産とし、悪名高いままこの世を去っていきました。

それでは、最後にことわざにまつわる物語をご紹介しましょう。今回のことわざです。

「平穏のありがたみは、災難に巻き込まれて初めて分かるもの」

昔々のこと。あるところに、商人がいました。この商人は、海の向こう側に多くの商品を持っていって、それを売ったお金でより多くの利益を得ようと決めていました。商人は荷物を港まで持って行き、それを船に積み上げました。そのときにはいつも、信頼を寄せていた弟子の一人が立会い、作業を見守っていました。商人の荷物が船に乗せられると、彼と弟子も笑顔で船に乗り込みました。商人は、それまでにも幾度か、貨物船や旅客船であちこちの国に行ったことがありましたが、弟子の方は、船に乗るのが初めてでした。船が出発する前から、弟子はうれしそうに、船の上から見送りの人たちに手を振ったり、商人とのこれからの旅に、甘く大きな願いを描いたりしていました。

船が出発し、岸から離れていくと、弟子は周りを見回し、少し恐ろしくなりました。岸は見えなくなり、見渡す限り、水ばかりでした。時に大きな波がうねり、強い風が吹いて、船が大きく揺れたため、乗客は何かに捕まらないと立っていられないような状態になりました。突然、弟子は全身に恐怖を感じ、こう思いました。「なんてことをしてしまったんだ。パンもなければ水もない、船に乗るなんて、どうかしていたんだ」

弟子の行動を観察していた商人は、彼が怖がっていることに気づきました。そこで弟子に手を差し伸べ、言いました。「海の旅は、本当に楽しくて愛すべきものだ。海の旅をしたことがない人は、最初は怖いかもしれない。気持ち悪くなる人もいるが、少しずつ、海の美しさと海洋の旅に慣れて、それを楽しむことができるだろう」。弟子の顔色は悪く、目は海ばかりを見つめ、船の柱にしがみついて、商人の言葉を聞く余裕もありません。商人は、弟子の具合が悪いのを見て、彼を放っておくことにしました。

商人は、弟子の恐怖を見てみないふりをしても、彼が自分で問題を解決するだろうと思いました。しかし、そのようにはなりませんでした。船が動き出してからほどなくして、弟子の叫び声が聞こえました。「助けてくれ! 船に乗るなんて、私が間違っていた。私を岸に戻してくれ」。商人は歩み出て弟子の肩を振り、言いました。「騒ぐんじゃない。気が狂いでもしたのか? 少し待てば、船の揺れに慣れてくる」。しかし、商人の言葉など、弟子の耳には入りません。弟子はまだ叫び続け、船を港に戻してくれと要求しています。乗客たちが彼を囲み、それぞれが、彼を馬鹿にするようなことを言いました。弟子が恥ずべき行動に出ていると感じた商人は、ある計画を思いつきました。

商人は、水の中で溺れた人を助ける船員のひとりにこう言いました。「私の弟子を助けるための準備をしてくれないか」。そして、非常に腹を立てた様子で弟子に近づき、けんか腰で言いました。「こんな臆病な弟子ならいらない。今すぐ、お前を海に投げ込んでやる。自分で泳いで岸まで戻ればいい」。

商人は弟子を叱りながら、彼の背中を押し、船の上から海の中に落としました。こんな運命が待ち受けているとは思いもしなかった弟子は、目の前に死を感じ、助けてくれと泣き喚きました。

少したってから、溺れた人を助ける救助の男性が水に飛び込み、弟子を海から引き上げ、船の甲板まで連れてきました。弟子は、船の甲板が、海の中よりも安全なことを知り、船の片隅に座って黙ってしまいました。一方、商人の賢さを悟った船の乗客たちは、彼の周りに集まり、口々に言いました。「なんてすばらしい計画だ。私たちには考えもよらないことだ」。商人は言いました。「弟子を海に投げ込めば、彼も、船の上の方が、水の中で溺れるよりも安全だということに気づくと信じていた。彼は水の中に落ちて、溺れかけるという恐怖を体験しなければ、船のありがたさを理解できなかっただろう」

このときから、本当に困難な状況に陥らなければ、与えられた恩恵の価値を知ることのない人について、こんな風に言われるようになりました。「平穏のありがたみは、災難に巻き込まれて初めて分かるもの」

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