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2013/10/09(水曜) 19:36

ヒーラール王

ヒーラール王

今回のペルシャ民話の園は、インドの昔話、ケリレとデムネから、「ヒーラール王」のお話です。

昔々のこと。遠くの国に、ヒーラールという名の王様がいました。ヒーラール王はある晩、悪夢にうなされて飛び起き、周りを見回しました。不思議な、そして恐ろしい夢でした。日が昇るまでずっと、恐怖が消えませんでした。何かが起こる前兆でしょうか?それとも、唯の恐ろしい夢に過ぎなかったのでしょうか? とにかく、その夢の意味を早く知りたくてたまりません。そこで番人を呼び、言いました。「今すぐに、僧侶たちをここに連れて来なさい」 番人は大急ぎで部屋を出ていくと、バラモンと呼ばれる僧侶たちと一緒に戻ってきました。ヒーラール王はすっかり取り乱しており、恐れおののきながら、昨夜見た夢について僧侶たちに語り、こう告げました。「朕は、この夢のせいで不安にさいなまれている。朕の見た夢が一体何を意味するのか、夢説きをしてもらいたい」 バラモンたちは互いに顔を見合わせました。誰もが王様の恐怖と不安を理解していました。すると、年長の僧侶が、王様にお辞儀をして言いました。「恐れながら王様、あなたの夢は非常に恐ろしいものです。それを解釈するには、何時間もの討議検討が必要です。簡単にはお答えできませぬ。できれば、ここはひとまず失礼して、他の者たちと話し合ってから、その結果をお伝えしたく存じます」 王様はその申し出を受け入れました。

 

僧侶たちは静かな場所に集まり、互いに話し合いました。とうとう報復のチャンスが訪れたのです。年長のバラモンが言いました。「有難いことに、あの卑しい圧制者に対し、1万2000人の仲間たちが流した血の敵討ちをするための、またとないチャンスが巡ってきた。彼と、そしてあの大量虐殺に関わった者どもを滅ぼさなければならない。この機会を失ってはいけない。あの圧制者を王座から引きずり降ろすのだ」 するとバラモンの一人が尋ねました。「だが、一体どうしたらよいのか?これほどの権力とたくさんの役人を従えている彼を、どうやって討ち取るというのか?」 すると、年長の僧侶が言いました。「あの暴君の取り巻きの者を皆殺しにし、彼が1人きりになったところを狙うのだ」 するとまた、先ほどの僧侶が、「一体、どうやってそんなことをするのか?」と尋ねました。年長の僧侶は言いました。「私に考えがある。王様を絶望に追い込む計画だ。全てを私に任せるがいい。だが、それには全員で力を合わせる必要がある。1人たりとも、謀反は許されない。これから1,2時間後に、皆で王様のもとに行き、そこから計画を実行に移すのだ」

 

王様は王座に座っていました。年長の僧侶は、かねてからの計画通り、王様の前に立って言いました。「申し上げます。これまで討議検討を重ね、様々な書物を参照した結果、あなたの夢を解き明かすことに成功しました。誠に申し上げにくいことですが、私めが只今から申し上げることは、よい知らせではございません。しかし、私めには敢えてそれを王様に申し上げる責務があります。あなたの夢説きの結果は、今申し上げた通り、恐ろしいものであり、それは、あなたの王座の崩壊につながるような大きな災難を伝えるものです。あなたの見た夢は、悪を示すものですが、それを逃れる方法が一つだけございます」 王様はすぐに、それはどんな方法かと尋ねました。年長の僧侶は答えました。「それは、私たちの前で、あなたの取り巻きの者たちの首をはねることです」

王様は言いました。「何だって? 朕の取り巻きの者たちの首をはねるとは、一体どういうことだ。神よ、朕を助けたまえ。朕に適切な解決法を授けたまえ。朕にそのようなことはできぬ」

 

年長の僧侶は言いました。「残念でございますが、他に方法はありませぬ」 王様は言いました。「何ということだ。ところで、朕の取り巻きの者たちとは、誰のことを指すのだ?」 年長の僧侶は答えました。「はい。王様がお望みとあらば、申し上げましょう。あなたのご子息、それからお妃、大臣、書記長、そして、戦いに連れて行く白い象と、あなたたちがお乗りになる2頭の馬です。彼らの首をはね、それからその剣を折り、彼らと一緒に埋めるのです。それから私たちが、彼らの血を洗濯だらいの中に流しますから、王様にはその上にしばらく座っていただく必要がございます。そして、王様が洗濯だらいの中から出てこられたら、私たちは四方からあなたを囲み、呪文と祈りの文句を読み上げます。そして、その血をあなたの左の肩にすりつけます。それからあなたの体を水で洗い、特別なクリームを塗ります。それが済んだら、あなたは安心して王座に座ることができるでしょう。もし、あなたに申し上げたことをきちんと実行なされれば、あなたの夢が正夢となることはありません。ですが、そうでなければ、あなたは王座を失い、死につながるような大きな災難に巻き込まれるでしょう」

 

王様は言いました。「いや、朕にはそのようなことはできぬ。それならば、朕は死を選ぶ。大切な者たちを殺せだと? そんなことをした後で、朕だけがぬくぬくと生き続け、王座に留まることなどできぬ。朕は、あの取り巻きの者がいなければ、富も王座もいらない。どうか、考え直してくれたまえ」 年長の僧侶は、王様が慌てふためくのを見て、しめたと思いながら、自分が一歩、目的に近づいたのを感じて言いました。「他に方法はございませぬ。これが唯一の方法でございます。あなたは王様であらせられます。他の人を優先してはなりませぬ。国家には、王様が必要でございます」 王様は、黙りこんでしまいました。誰にも王様を助けることはできませんでした。もはや権力も富も、王様を喜ばせることはできませんでした。ヒーラール王は、僧侶たちを立ち去らせると、1人で静かな場所に行き、むせび泣きました。そのとき、遠くから王様の様子を見ていた大臣のバラールは、王様が塞ぎ込んでいるのに気づきました。しかし、王様のそばに行き、その理由を尋ねる勇気がありませんでした。バラールは王様のことをよく知っていたため、そのようなときに、話しかけるのは無駄であることが分かっていたのです。そこで、お妃さまのもとに行くことにしました。お妃さまなら、もしかすると王様がなぜ塞ぎ込んでいるかを知っているかもしれないと思ったのです。

 

ここからは、ことわざにまつわる物語をご紹介しましょう。「飼い主に損失を与えるために叩かれる、あのロバのようだ」

 

昔々、ある村に、食べることと眠ることが何よりも好きなロバがいました。このロバは食べてばかりで、ほとんど仕事をせず、そして何よりも悪いことに、他のロバよりも大きな声で鳴きました。ロバの飼い主は働き者で、このロバをとても大切にしていました。しかし、愚かなロバには、それが理解できません。ロバはいつも考えていました。「私は世界で最も優れたロバだ。私の飼い主は、世界中を探しても、私のようなロバを見つけることはできないだろう」 そんなある日のこと。飼い主はロバの手綱を引いて言いました。「この怠け者のロバめ、よく聞け。お前も他のロバと同じように働くべきだ。もし明日からまじめになればよし。さもなくば、これ以上干草をやらないぞ」

 

ロバは考えました。「どういうことだろう。ちょっと様子を見てみるか」 翌日、ロバがいつものように干草を食べようと小屋に行くと、飼い主は昨日言ったことを実行していました。えさがどこにもないのです。ロバは考えました。「飼い主は言ったことを実行したようだ。どうやら動かなければいけないときが来たか。すきっ腹を抱えたままでいるなんて、そんな馬鹿なことができるものか」 ロバはそう言うと、小屋を出て行きました。すると、仲間たちに呼ばれました。「どこに行くのだ? 迷子になるぞ」 怠け者のロバは言いました。「こんな生活なら死んだ方がましだ。なぜ食べるために働かなければいけないんだ?」 ロバはそう言うと、村を離れ、急ぎ足で立ち去り、野原にたどり着きました。野原には、農民たちの植えた小麦の畑がありました。最初の畑につくと、ロバは小麦を食べ始めました。おなかが空いていたので、小麦はとてもおいしく感じられました。しかし、すぐにクビを強く叩かれました。振り返ると、その畑の持ち主がいました。持ち主は言いました。「こら!人の畑に入るとは何事か!お前の飼い主は何をやっているのだ?」

 

怠け者のロバは知らないふりをし、なおも食べ続けました。畑の持ち主は、今度はさらに強く、ロバの頭をたたきました。ロバは逃げ出しました。しかし畑の持ち主は、ロバが二度と畑に入って来ないよう、逃げるロバを追いかけて叩き続けました。そのとき、ロバ飼い主の声が聞こえました。「何をする!人のロバを殺す気か?」 畑の持ち主は言いました。「ロバが他人の小麦を食べなければ、叩かれることもない」 ロバの持ち主は、手綱を握って言いました。「口のきけないロバに何てことをしたんだ。かわいそうに、血だらけじゃないか。もしこのロバが死んだら、私がどれだけ損をするか分かっているのか?」 畑の持ち主は言いました。「他人の小麦を食べないよう、お前が自分のロバをしっかり見はっていないからいけないのだ。誰が私の損失を支払ってくれるのだ?」 そのとき、ロバは考えました。「私の飼い主は、私のことではなく、自分の損失を心配している。それなら私にも考えがある」

 

ロバと飼い主が小屋に戻ると、飼い主は一握りの干草を彼の前に置いて言いました。「さあ、食べるんだ。お前がこれを食べている間に、お前をどうするか考えることにする。まじめなロバにならなければ、腹いっぱい干草は食えんぞ」 ロバの仲間たちは彼に同情し、それぞれが少しずつ干草を分けてくれました。しかし、それだけの干草では、このロバはすきっ腹を満たすことはできませんでした。

 

翌日、ロバは再び、小屋から逃げ出し、野原に行きました。しかし今度は、腹を満たすためではありません。彼は叩かれて、飼い主に損失を与えるために、わざとそこに行ったのです。わざと、何人もの農夫が働いている畑に入っていきました。彼らは、新鮮な小麦を食べるロバを見て、このロバを袋叩きにし、とうとうロバは気を失ってしまいました。

 

意識を取り戻したとき、ロバは自分の小屋にいました。仲間たちが集まってきて、彼の様子を心配そうに見ていました。怠け者のロバは尋ねました。「何があったんだ?」 仲間の一頭が言いました。「皆がお前を殺すつもりで、お前を袋叩きにしたんだ」 怠け者のロバは尋ねました。「飼い主は何をしていた?」 別のロバが言いました。「彼はすごく憤慨していたよ。もしこのロバが死んだら、大変なことになると言っていた」

怠け者のロバは笑って言いました。「それなら殴られてよかった。明日もあそこに行くことにしよう」 そのとき、黒いロバが彼の言葉を遮って言いました。「それは間違っている。怠けてばかりいないで働けば、えさももらえるし、叩かれずに済むというのに」

怠け者のロバは言いました。「もしその忠告を聞かなければどうだ?」

黒いロバは言いました。「そのときは、愚かなロバになるだけだ。そうなれば、みんなから、こう言われるだろう。『飼い主に損失を与えるために叩かれる、あのロバのようだ』」

 

このときから、誰かに損害を与えるために、愚かにも自分を犠牲にする人のことを、こんな風に言うようになりました。「飼い主に損失を与えるために叩かれる、あのロバのようだ」

 

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