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2015/09/07(月曜) 16:38

不和を抱えるイラク

不和を抱えるイラク

現在、イラクは困難な日々を送っています。イラクの危機や脅威、政治的な不和は、全体的な政治体制を持ちながら、実質的には、クルド、シーア派、スンニー派の3つに分割されているというところにまで達しています。西アジア・北アフリカでは2011年から、数十年続いた癒着政権に反対するイスラムの目覚めが起こっています。しかし、イラクのような国は、この5年に及ぶ地域の危機に巻き込まれているのです。


イラクは2003年、アメリカの攻撃を受け、その後テログループに悩まされるようになりました。一方、シリア危機における外国の干渉や、外国によるシリアのテロリストに対する支援により、これらのテログループが全面的にイラクで活動し、一部地域はテロ組織ISISに占領される事態にまでなっています。このような状況は、イラク政府が安全対策に集中するようになり、イラクの反政府派にとっての活動の下地となり、また、政府が社会的なサービスに関心をほとんど向けられない要因となっており、これらの要因すべてが、イラクの危機を作り出しています。
テロ組織ISISの脅威は、イラクの国の安全と領土保全に対する最も大きな脅威のひとつです。ISISは2014年6月、イラクに侵入し、この国の一部を占領しています。この組織の指導者アブーバクル・バグダディは4つの重要な策略により、イラクのアルカイダや旧バアス党勢力など、ほかのイラクの過激派グループを吸収しました。この4つの策略とは、イラクにおけるアルカイダ幹部のローカル化、元イラク軍兵士の勧誘、イラク国内外の若者に対する勧誘活動、テロ作戦の拡大に当たります。
イラクは18の州を持ち、南部の9つの州ではシーア派の人々が、北部の3つの州では、クルド人が安全に暮らしています。しかし、バグダッド、ディヤーラ、キルクークの3つの州では治安の悪化に直面しており、さらにサラーフッディーン、アンバール、ニナワの3つの州では、情勢不安が広がり、これらの州はISISの主な活動場所となっています。
サラーフッディーン州は軍事的な面からはイラク軍の統制下にありますが、ISISはこの州における失敗を、自爆攻撃や定期的、或いは不定期の衝突により埋め合わせようとしています。ISISはイラク最大の面積を持ち、イラクの国土のおよそ3分の1に当たるアンバール州でもっとも盛んに活動しており、アンバール州の州都ラマディやその周辺の村、シリア国境近くの北部はISISの占領下にあります。また、ニナワ州とその中心都市モスルは、完全にISISに占領されています。
イラクのもっとも大きな問題のひとつは、政治的なまとまりの欠如です。シーア派、スンニー派、クルド人は、イラクを国家としてみることなく、分化しているものと見ています。この立場は、クルド人やスンニー派の人々では多数を占めています。スンニー派の人々はイラクの独立から2003年まで、権力を掌握していました。彼らは新たに生じた状況を自分たちにとっての利益とみなさず、2003年以前の体制に戻ることを望んでいます。クルド人は2003年以前、サッダーム政権の支配を受けており、2005年のイラク憲法で、クルド人地域は自治区として正式に認められました。
クルド人地域はイラクにおける唯一の自治区であり、自分たちの政府や議会、治安部隊を持っています。クルド自治区独自の憲法も、2009年に議会で可決されましたが、住民投票はまだ行われていません。イラクのクルド自治区は独立国家の樹立を望んでいますが、クルド自治区の独立は、実行可能な計画というよりもイラク政府に対する政治的な圧力手段となっています。
クルド自治区はエネルギーの採掘と輸出、予算に関する経済、クルド人部隊のペシュメルガによる治安、キルクークのような対立する地域の4つの要素において、バグダッドの中央政府との対立を抱えています。クルド自治区の関係者が取っている重要な行動のひとつは、独立した外交政策で、これはイラクの外交政策に反しており、またイラク憲法にも反しています。たとえば、クルド自治区のバルザニ議長は就任以来、これまで4回に渡り、アメリカを公式訪問しています。全体的に、イラクには政治的な統一性がないことから、2010年には政権樹立において困難に直面し、政権の成立までに9ヶ月の時間を要したのです。
もうひとつの現在のイラクの問題として、政府が脆弱なことが挙げられます。イラク政府は社会構成上の理由で、また政権に対して宗派的に分化した見解が存在することから、十分な権力を持っておらず、常にそれぞれのグループの圧力を受けています。テロ組織の脅威に対する上で、治安維持が困難になっていることから、イラク政府は領土保全と治安対策に集中することになり、社会問題に関しては何の対応も取れていません。このため、イラク各地、特にシーア派地域は大きな抗議に直面しているのです。
シーア派居住地域で抗議が起こっている最も重要な理由のひとつは、水道や電気などの社会的なサービスの不足や厳しい暑さにあります。確かにこれらの不足は、2003年のイラク攻撃とそれによるインフラの破壊によって生じたものですが、イラクの反体制派は、この問題は政府の行動による責任であるとしており、この問題に宗派的な色合いを与えているのです。
省庁のポストにおける党派ごとの分化も、イラクで汚職が拡大する要因となっています。つまり、大臣たちは支持者の利益のために動く傾向があります。イラク軍では汚職が横行しており、軍の幹部は食料や軍需品ための費用を横領しており、また数万人の兵士もISISとの戦争に参加していません。このような状況を考慮し、イラクのアバディ首相はイラクのシーア派最高権威スィースターニー師の進言により、一連の改革案を提示しました。
アバディ首相の改革案で重要なもののひとつは、大臣のポストを33から22に減らし、副首相のポストと副大統領のポストをそれぞれ3つ削減することです。この改革案も現在、イラクにとっての政治的な問題のひとつとなり、賛成派と反対派が存在しています。反対派はイラク議会の解散を要求しており、イラク各地、特にシーア派居住地域の抗議運動を利用し、シーア派同士の勢力争いを生み出しているような状況となっています。
イラクの現在の多面的な危機が、この国の領土保全にマイナスの結果を及ぼしているということについては、疑いの余地はありません。現在のイラク危機の最も重要な結果のひとつは、ISISによる領土の一部の占領と、領土保全に対する危機です。最近、アメリカの一部高官は、イラクの危機を終わらせるために、イラクをシーア派、スンニー派、クルド人の3つの地域に分割することを提案していますが、この分割案は、イラクの危機を終わらせることができるのでしょうか。
この質問に対して、決定的に「違う」ということがいえます。地理的な点から、居住地域を境としてイラクを分割することは不可能です。なぜなら、一部の州は、シーア派、スンニー派、クルド人で色分けすることができないからです。たとえば、シーア派の聖廟が2つ存在する聖地サーメラーは北部サラーフッディーン州にあり、ここはシーア派にとって大変重要な地域です。またディヤーラ州の住民の60%がシーア派ですが、スンニー派やクルド人も人口の40%を占めています。アンバール州、バグダッド州、バービル州、カルバラー州、ナジャフ州は隣り合っており、この州には州の境をめぐる対立が存在します。そのほかの障害に、資源、特に水資源の不足があり、これはイラク国内の深刻な対立の原因となっています。これに加えて、スンニー派が居住するアンバール、ニナワ、サラーフッディーンの3つの州では、スンニー派による統治が主張されており、これによりスンニー派同士の戦争の可能性が高まっています。
また、現在のイラク危機の結果、さまざまな面で人々の安全が失われています。この1年間の危機的状況の結果、イラク国内の320万人とイラク国外の290万人が難民化しました。2015年7月13日に発表された国連の報告によりますと、2014年1月から2015年4月までの期間、4万4千人以上のイラク人が何らかの被害を受け、1万5千人近くが殺害されています。また、およそ320万人の就学児童にイラク危機の影響が及んでいます。さらにおよそ70%の難民の子供が、およそ1年間教育を放棄しており、少なくとも880万人が人道支援を、440万人が食糧支援を必要としています。
現在のイラク危機が短期間で終わるのは不可能だと考えられています。たとえISISがイラクである程度弱体化しても、イラクでISISの脅威が消え去るまでに数年は必要です。また、政治的な統一の欠如と、イギリスの植民地主義の負の遺産としての宗派間の戦争は、イラク政府がISISとの戦争に集中するのを妨げる危険となっています。アバディ首相の一連の改革案は、それまでの分派による権力構造を打破し、それぞれの分派に適切な権力を分掌させるというものです。しかし、既得権益を持つ個人や集団は、社会サービスの改善を求める集団を扇動することで、一連の改革の実施を妨害しようとしています。このような状況は、イラクの人々の治安や国の将来を危険にさらしているのです。

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